初夏の訪れは女子高生と共に……

その頃横島達はちょうど電車を乗り換えて、先程まで魔鈴と雪之丞が乗っていた路線の電車に乗り換えていた


「なんか感じが違った電車ね」

都心をだいぶ離れると電車の種類も変わる

横島達が現在乗っている電車は一昔前のボックス式座席の電車だった

あまり電車に乗った経験のないタマモは珍しそうに、キョロキョロと車内を見渡している


「田舎じゃこんなもんだよ。 たまには電車もいいだろ?」

久しぶりの遠出に嬉しそうなタマモとシロは横島の向かいに並んで座っている

横島達はボックス席の一つを陣取り、乗り換え時に買ってきた駅弁を食べ始めていた


「しかし先生は反対すると思ったのでござるが……」

駅弁の肉を頬張り満面の笑みを浮かべるシロは、横島が反対しなかった事が少し不思議らしい



さて話は数時間前に遡る

魔鈴と雪之丞が出掛けた後、シロとタマモは密かに自分達も行きたいと作戦を考えていた

別に除霊に加わるつもりはないが、シロは集団除霊や強い人間に興味がありタマモは純粋に海に行って見たかったのだ

幸いな事に魔鈴の店で働いているのでお金はたくさんある

基本的にお金は魔鈴に管理してもらっているが、ある程度の小遣いはもちろん持っているのだ

目的地も知っているし二人でちょっと見に行くくらいならば可能なのだが、問題は横島だった

つまらない嘘をつく事は避けたいが、言ったら反対されそうなのは二人とも理解している

不思議なほど大雑把で適当なとこがあるかと思えば、過剰なほど神経質な面もあり対応が一番難しい相手なのだ


「いいぞ。 ただし間違っても除霊に手出ししたらダメだし、遠くから見るだけだからな」

「いいの?」

「反対されると思ったでござる」

散々悩んだ二人だが結局素直に横島に自分達も行きたいと告げると、横島の答えはあっさりと了解だった

二人はポカーンとしてしまうが、これは横島としては当然の対応である

元々横島も行きたかったという事実もあるが、それを抜かしても横島がタマモとシロの意志を無意味に否定する事はない

GSの仕事に関わるのは横島としては賛成出来ないが、霊能を知る事には反対してないのだ

二人が除霊に関わらないで見学するくらいならば、二人の将来にも役に立つし横島としても許容範囲だと言えるだろう



その後、横島達は魔鈴達と同じように電車に乗り現地に向かっていたのである



「いや、見るだけなら反対する理由ないだろ。 お前達が除霊を知るのは必要だしな。 それに立派に働いてるんだから、休みの日くらい好きにしていいんだぞ」

さて話は電車内に戻って、横島は不思議そうなシロに反対しなかった理由を語っていた

横島としては除霊にさえ関わらなければ、他はあまり気にしてない

二人の事は守らねばならないとは思うが、二人が興味を持つ事に関しては極力体験させてやりたいのだ


「まあ日帰りになるけどな」

魔鈴達は除霊が夜なために一泊する事になっていたが、横島は日帰りするつもりである

行きは行った事がない場所なので電車だが、帰りは文珠の転移で帰れるから楽に日帰りが出来るからだった


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