初夏の訪れは女子高生と共に……

その日の夜、夕食後に魔鈴は来週の六道女学院の除霊実習に参加する事を横島達に伝えていた


「除霊実習っすか?」

初耳の話に横島は少し興味があるようで内容を聞いていくが、霊能科による集団除霊実習だとわかるとそれ以上興味を示さなくなる

六道女学院にはあまりいい思い出がなく、クラス対抗戦の時の醜態が魔鈴にバレるのが嫌だったので黙ってしまったらしい


「横島さんには向かない仕事なので留守番になりますが、雪之丞さんはどうしますか? 六道家からは正式に依頼として来てますが」

「俺も行くのか!?」

今回の特別講師と同じく自分には関係ない依頼だろうと聞き流していた雪之丞は、予想外の事に驚きを隠せなかった

人に教えるなんてタチじゃないし、自分でも除霊実習の生徒のフォローなど出来ないと思うのだ


「生徒のフォローが中心ですし、あくまで依頼が来てるだけですから断っても構いませんが…… 受ける利点は大きいですよ」

気が進まないようで面倒そうな表情の雪之丞に、魔鈴はこの依頼を受ける利点を語る

雪之丞が将来GSになる上で一番難しい問題である信頼を得るためには、決して悪い依頼ではない

しかも除霊の危険度があまりない実習だけに、条件は悪くなかった


「そうだな……」

利点を聞いても雪之丞はハッキリしないままである

その理由として、雪之丞の中での六道女学院があまりいいイメージでない為だった

お嬢様学校として有名だし、以前かおりがいろいろ自慢げに話していた内容からあまり関わりたいとは思わない


「行けばいいじゃないの。 どうせGSがいっぱい居るんでしょ? 目立たないわよ」

「そうでござる! 信頼を得るのは大切でござるよ」

悩む雪之丞を後押ししたのはタマモとシロだった

大勢のGSが居れば新人の雪之丞ではさほど目立たないし、それに雪之丞が信頼を得るチャンスはあまり多くないのも二人は理解している

横島より更に不器用な性格からか、悪い人間ではないのに周りの評価や見方が良くないのは二人も感じていた

タマモもシロも横島同様に自分達を差別なく受け入れてる雪之丞には、幸せになってほしいと考えているのだ


「うーん……、そうかもな」

最後まで渋った雪之丞だったが、結果的にはタマモとシロに押される形で参加を決める

魔鈴と横島はあくまで雪之丞の意思に任せるつもりだったが、損得勘定を考えたタマモと信頼は多い方がいいと考えるシロは積極的だった

そして雪之丞の最終的な決め手は、タマモやシロとの信頼だろう

元々他人に何かを強制されるのは好きじゃないが、信頼する人の意見を聞かないほど傲慢でもなかった



(海って事は水着なんだろうか? 魔鈴さんの水着は見たいな)

(私だけ海に行った事ないのよねー)

(強い人がいっぱい集まるなら拙者も見てみたいでござるな)

そして魔鈴に留守番を言い渡された横島・タマモ・シロの三人だが、密かに自分も行きたい気もしていたが誰も言わないままだった

仕方ないから今回は諦めるかと、それぞれに考えてはいたのだが……
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