初夏の訪れは女子高生と共に……

「一般人に何かを依頼する事は考えてないわよ~」

魔鈴の《横島》に対して、冥菜はあえて《一般人》と言う形で返す

これは横島を一般人として扱うという事であり、横島をオカルトに関わらせるつもりがないという言葉でもある


実際冥菜は横島を評価してるが、その力が必要かと言えば必要ないのが現状だった

別に横島でなければ解決出来ない問題などないのだ

力や影響力や将来性は認めるが、下手に横島に関わらせると冥菜の手に余る可能性も否定出来ない

それに一番の問題は、横島に何が出来て何が出来ないのか判断出来ない事だった

考え方や価値観などもあまり知らないし、はっきり言うと平時に英雄は必要ないのだ


冥菜としてはそんな横島よりも魔鈴に期待する部分が大きい

令子と対極的な存在として生徒達の憧れやお手本になって欲しかった

現在六道女学院では令子への憧れや信奉が大多数だが、令子の場合隠された裏側がある

令子は令子で六道やオカルト業界にとって必要な存在だが、令子のみを過度に信奉する生徒が多いのは危険でしかない

将来的に彼女達が令子の裏側を知って、中途半端に同じ道に歩まれても困る

令子の裏側自体、少しでも業界に詳しい者ならば噂くらいは聞いた事があるのが当然なのだ

そうした現状では魔鈴のみならずたくさんのGSとの触れ合う機会を設けて、令子への過度な信奉を減らしたい思惑もある



「そうですね……、ならばお受け出来ます」

冥菜が横島を一般人と言った意味をすぐに理解出来なかった魔鈴だったが、最終的には理解して自分一人ならば除霊実習に参加すると伝えた

冥菜は続けて良かったら雪之丞にも参加してほしいと告げたが、魔鈴は明言を避けた

書類上は魔鈴の弟子だが、実際は弟子というより仲間なのだ

基本的に雪之丞の意志を確認する前に魔鈴が何かを決める事はない


(あまり気が進まないでしょうが、雪之丞さんにはいい機会ではあるんですよね)

冥菜が雪之丞にも参加を打診した事は、魔鈴にとって嬉しい事だった

雪之丞本人はどう考えるかわからないが、雪之丞が六道女学院の関連行事に参加する事は決してマイナスではない

GS試験での変貌ぶりと紳士的な戦いに業界内での反応がだいぶ良くなった雪之丞だが、それでも過去が消えた訳ではない

六道女学院の行事に参加をする事は、そんな雪之丞の信頼性を高める事になるだろう

六道家が正式に雪之丞に参加を打診しただけでも、業界内での立場が多少は変わる可能性がある

雪之丞が将来に何を望むのか魔鈴は詳しく知らないが、GSを本業にするならばあまり孤立するが良くないのは確かだった

オカルトGメンへの協力という信頼を得るカードがなくなった以上、六道女学院の公式行事に参加する意味は大きいと考えている


その後雪之丞の件は後日返答すると伝えた魔鈴は、六道女学院を後にして行った


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