「私は以前に何回か参加したが、それほど難しい除霊ではないよ。　ただ数が多いし時間がかかるから油断は出来ないがね」

冥菜に続き過去に何度か除霊実習に参加した事がある唐巣が過去の実習の様子を語る中で、魔鈴は少し考え込んでいた

店を休まなくてはならなくなるが、基本的には受けるべき依頼だろうと思う

世の中のために働きたいという魔鈴の理想を考えれば、危険度が少ない依頼は引き受けたい

横島の関係からオカルトＧメンには協力出来ないが、だからと言って自分達だけ幸せになればいいとも考えてない


「引き受けてるのは構いませんが、横島さんは来ませんよ」

ただ魔鈴としては、引き受ける前に一つだけ確認しなくてはならない問題があった

それはもちろん横島の事である



ここで少し話が逸れるが魔鈴は正式にＧＳとして事務所は構えてないが、レストランの店舗をＧＳ事務所としてＧＳ協会に登録はしていた

かつて日本に帰国した際に、いつでも活動出来るように一応登録だけはしていたのである

まあその結果、帰国当初令子の客の一部が魔鈴に流れて問題にもなったが、実はあの客の大半は今だに魔鈴の顧客となっていた

令子とのトラブルで料金を相場に戻した魔鈴だったが、それでも令子よりはかなり安いのだ

難易度が高い依頼などは令子に戻ったのもあるが、除霊後も相談に乗ったり細かいアフターケアをする魔鈴に大半の客が乗り換えてしまったのである

これは根本的な考え方や営業の仕方の問題だろう

令子はどんな依頼でも料金さえ貰えれば解決する方針だが、魔鈴は除霊以外にも除霊するまでに至らないような予防的な依頼も受ける

一度除霊した依頼でも、再発の危険がある依頼に関しては予防的な指導や処置などを細かく行うのだ

その結果、依頼人との信頼関係も生まれ魔鈴が忙しくなる原因ともなっているのだが、これは仕方ないだろう


さて話を戻して現在の魔鈴のＧＳとしての従業員は雪之丞一人である

実際には横島も除霊をしているが、現在の横島はあくまで一般人でありＧＳ免許がある魔鈴や雪之丞の助手でしかない

基本的にＧＳ免許は除霊作業を仕事として活動するために必要なものであり、横島本人がお金を貰う依頼を受けなければ必要ないのだ

実際に横島が除霊しても責任はあくまでＧＳ免許を持つ魔鈴や雪之丞にあり、本来はＧＳ免許取得が出来ないような力のない霊能者達と同じ立場にある

これはオカルト関連の法律の盲点を点いた事だった

基本的に霊能力は商業的な除霊や悪用さえしなければ全く規制がないのだ

無論霊能力を使った犯罪行為には厳しい罰則などもあるが、霊能力を個人が使用するのを取り締まる法律など人権の問題からない

横島のように第三者の責任の元で除霊に参加する一般霊能者は、別に悪い事ではないのである

ただ免許取得レベルの霊能者が、好き好んで助手を続ける事を想定などしてないのも事実であるが……


そんな訳で横島は、正式に魔鈴のＧＳとしての助手ではない

魔鈴としては冥菜が横島に何かを期待してるなら断るつもりである

魔鈴自身が若い霊能者達を導く手伝いが出来るならば受けるが、横島が絡むならばそちらを優先させるつもりだった