初夏の訪れは女子高生と共に……

「除霊実習ですか?」

渡された報告書や資料を見ながら考え込む魔鈴に対して、冥菜は今回の依頼をする事にした訳を語り始める

そもそもの始まりはアシュタロス戦の影響から始まり、2・3年の生徒の中でGSを諦めた者も多く問題になっている事

まあただ諦めるだけならば仕方ないのだが、霊能力はそれなりにあり中途半端に霊が見えるため最低限の霊能者としての教育は必要なのだ

GSにはならなくても六道女学院霊能科卒業となれば、オカルトの専門家として扱われる事も少なくない

オカルト業界や一般社会に正しく霊や妖怪を知ってもらうためにも、霊能科に入った以上最低限の霊能者になって貰わねばならないのだった


「本当は令子ちゃんに頼んだんだけど、断られちゃって~ 今決まってるのはエミちゃんと冥子と唐巣君とピート君と他数名のGS達よ~」

令子の名前に魔鈴の表情がピクリと動くが、冥菜は気にせずに説明を続ける

この臨海学校の除霊実習は、元々令子に頼んだ依頼だった

しかし令子は仕事のスケジュールが合わないと断ってしまい、その結果魔鈴に依頼を持ち掛けている


ちなみに令子が断った理由だが、実はスケジュールの都合などではなくただ単に嫌なだけだった

理由の一つがエミ同じ講師としてが来る可能性が高いと令子が考えたためであり、一緒に仕事などしたくないのだ

エミはGS試験で魔鈴と一緒だったという情報から会いたくないし、少し前に深夜のバーで会った時の対応にも腹を立てている

そしてもう一つの理由だが、憧れや羨望の眼差しを向ける生徒達の相手が面倒なだけだった

生徒達が望む美神令子で居る事にストレスを感じてる令子としては、出来ればやりたくない仕事の一つになっている

卒業式や入学式など令子の代わりが居ない場合は我慢するが、除霊実習は別に令子でなくても構わないだろうから断ったようだ


「大丈夫なのですか? 正直、大規模な除霊をさせるには少し不安な気もしますが……」

魔鈴は失礼とは知りつつ、この除霊実習の危険性を指摘する

六道女学院の生徒の実戦でのレベルは知らないが、監督者が教師数名とGS数名では少ないと考えたようだ

今日の特別講義の様子からもわかるが、ちょっとでも予測不能な事が起きれば総崩れしてしまう可能性がある

除霊実習はいいのだが、数が多い大規模除霊は魔鈴としては危険だと判断していた

「今までは大丈夫だったのよ~ ただ今年はアシュタロス戦の影響を考慮してGSを増やす事に決めたの~」

今までは事故も失敗もなかった除霊実習だが、今年監督GSを増やした理由は生徒の心理面の影響を考慮しての事である

コスモプロセッサーの時を思い出したりして不安になる生徒が出たりしないように、冥菜としてはやり過ぎとも言えるほど一流GSを集めていた

魔鈴の場合は早い段階から候補に上がっていたのだが、令子との関係上同じ依頼を出来なかったのだ

結果今回は令子が断った事により代役のような形になってしまい、魔鈴の心証は良くないのは冥菜も理解してるが、魔鈴への対応には出来るだけ嘘を言わない方がいいと判断したようだ

百合子やタマモや小竜姫など、魔鈴の周りには嘘を見抜く可能性の高い人物が多い

下手な嘘が信頼を失う事を冥菜はよく理解していた


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