初夏の訪れは女子高生と共に……

基本的にアシュタロス戦に関しては、世界中の霊能者や軍隊のほぼ全てが戦ってない

戦ったのは美神親子と関係ある日本のGSくらいだった

絶対に勝てない相手であるアシュタロスに対して、ごく一部の例外を除き沈黙を貫いていたのだ

まあ大半の者は状況すら理解しておらず、ある程度状況を理解してる者は神族に期待する

そんな戦おうとしなかった者達よりも戦った冥子を魔鈴は評価していた

プッツンなど欠点も多いが、同時に評価されるべき点もしっかりと評価するべきだと思うのだ

横島や雪之丞などの本来評価されるべき人が評価されない現状を知るだけに、不自然な現状にはどうしても怒りを感じてしまうようである



一方おキヌは、魔鈴の様子を無表情のままで見つめていた

以前と変わった魔鈴の変化に、おキヌの胸は締め付けられるように苦しくなる

まるで輝くような雰囲気を纏う魔鈴の姿は、かつての令子のようにすら見えてしまう

令子とは質の違う強さや美しさや優しさを兼ね備えた魔鈴に、おキヌは幸せそうな横島の姿が見える気がした


(やっぱりあれは横島さんの力でもあったんだ……)

かつての強くて美しい令子を思い出すおキヌは、それを支えていたのが横島の見えない力だったと改めて感じる

失ったモノの大きさや大切さはすでに痛いほど理解してるが、今の魔鈴を見ていると横島の凄さを改めて理解してしまう

魔鈴にはそれほど変わったという意識はないのもなんとなく理解してるが、それでも横島を一番長く見てきたおキヌには魔鈴の中で横島がどれだけ大きな存在になったのか気付いてしまった


(私だけ止まったままなんだ……)

変わった魔鈴の姿は、この数ヶ月の時の流れを感じるには十分である

きっと横島や周りも変わったのだろうと思うと、おキヌの心にはやり場のない寂しさが込み上げて来てしまう

ようやく魔鈴を見る勇気を持てたばかりのおキヌには、それは厳し過ぎる現実ばかりだった



「残り時間も僅かになりましたが、皆さんが今日の私の話から少しでも何かを感じて頂けたら幸いです。 それと、もう少し社会勉強を経験した方がいいと思います」

講義の最後を魔鈴はこの一言で締めくくる

結局最後まで何も答えを示さずに己で感じ考えるよう仕向ける辺り、魔鈴は教える側としては厳しいかもしれない

更に最後の最後で社会勉強の不足をダメだしするなど、普通の特別講師とは全く違っていた



「やっぱり頼んでよかったわね~ なかなか厳しい事を言ってくれる人が居なくって~」

魔鈴の講義が終わった後、冥菜は満足そうに笑顔を見せる

予想とは違う内容だったが、それでもきちんと意味のある内容に満足していた

それに冥子の事を半ば馬鹿にしたように笑った生徒を静かにさせたのも、冥菜にとっては評価が高い

娘が馬鹿にされるのは親としては面白くないと言う気持ちも当然あるが、一方で特別講師とはいえきちんと悪い事は悪いと叱ったのも評価のポイントだった

特別講師はその性質上どうしても甘くなりがち出し、生徒に厳しく言える者が少ないのだ

六道家に対する遠慮や業界関係者が親などに多い生徒の扱いは、どうしても腫れ物を扱うようになる者も少なくないのである


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