様々な反応を示す生徒達の最後尾では、冥菜と唐巣が魔鈴の講義を見守っていた

冥菜は理事長として見学しているが、今回間接的に魔鈴が特別講師をする原因だった唐巣も気になり様子を見に来たようである


「ちょっと予想と違ったけど～、頼んでよかったわ～」

魔鈴の講義内容に冥菜は若干自身の予想と違っていたが、それでも満足げな笑みを浮かべていた

冥菜としては、魔法を使った除霊などを話してくれると思っていたらしい

まあ令子のように力技で無理矢理除霊させる方法でなければ、結果的にどんな話でも構わないようだ


「しかし、生徒達が魔鈴君の話を理解出来るか不安ですね。　少し難しすぎる気もします」

「難しいからこそ、話したんでしょうね～」

魔鈴の語る話は簡単に受け取ると、ＧＳの依頼はどんな簡単な依頼でも複雑な裏側がある可能性があるということ

だが話の真意は人間やＧＳが正しく、悪霊や妖怪が悪いような固定観念を否定してることに等しい

悪霊もその大半は好きで悪霊になった訳ではないのは、六道女学院の生徒でも知っている

だが人に危害を加えたり人の生活を邪魔するならば、ＧＳは無理矢理でも除霊しなければならないのだ

矛盾や理不尽な事が当然のように起こる、ＧＳ業界の難しさを早いうちに理解するのは必要である

魔鈴は未来のＧＳ達に安易な固定観念を持って欲しくない為に、このような講義をしていた

ただ唐巣が危惧するように、魔鈴の真意にこの場所でたどり着いた者はごくごく僅かしかいない

多くの生徒は真意に気付かぬまま忘れていくだろうし、忘れずに真意を求める者は一流のＧＳになるはずである


結局魔鈴の講義の厳しさは、冥菜や唐巣の予想以上だった事は確かだった

まあその訳はかおりや魔理の世間知らずな二人の暴走が微妙に影響してる事には、冥菜も唐巣も気付かぬままである



さて講義が一段落して残り一時間ほどになった頃、魔鈴は残り時間を質問タイムに当てていた

いろいろ考えさせられる話をしただけに、最後は生徒達の様々な疑問に答えるつもりである


「何か魔法を見せてくれませんか！」

いざ質問タイムになると、生徒達が質問したのはやはり魔法の事が大半だった

小難しいＧＳの問題点よりは、魔法の技術や力に興味を抱くのは若い彼女達では仕方ない事だろう

事実魔鈴の魔法技術は一部を除き公表してないのだから


「そうですね……　では、ほうきを使った使い魔をお見せしましょうか」

興味深々な様子で目を輝かせる生徒達に、魔鈴は少し苦笑いを浮かべる

力を求め技術を求めるのは悪い事ではないのだ

ただもう少し精神的成長をして欲しいと願うが、やはり横島や雪之丞と比べるのは可哀相だと思う


生徒達が見守る中で魔鈴がパチッと指を鳴らすと、１０本の普通のほうきが現れる

そのほうきに魔鈴は一本づつ魔法をかけていくと、ほうきは講堂を走り回っていく

これは横島達が来る前までは接客用に使っていたほうきの使い魔である

水や簡単な物を運ぶくらいしか出来ないが、以前はかなり重宝していた魔法だった


突然１０本のほうきが生きてるように講堂を走り回る事に、会場内は授業だという事を忘れたように騒がしくなっていく