部屋の中は重い空気が漂っていた

突然謝罪に来た二人に対し雪之丞は無視したままテレビを見ているし、タマモとシロも距離を置いたまま無言である


「弓さんも一文字さんも久しぶりだな。　なんかあった？」

重苦しい空気に何故か居心地の悪さを感じる横島だが、いつものように軽い調子だった

正直横島としてはかおりと魔理の二人にはあまりいい印象がないのだが、タイガーや雪之丞の手前邪険にも出来ない


「この前はすんませんでした」

説明も何もなく突然謝る魔理と一緒に頭を下げるかおりに、横島は戸惑いを感じていた

状況に困ったように魔鈴とタイガーを見るが、魔鈴もまた微妙な表情だしタイガーはオロオロするばかりである


「別に謝らなくていいよ。　二人には二人の考えがあったんだろうしな。　まあ俺のような失敗例があるって考えて今後に生かしてくれればいいかな」

対応に困った横島は、少し考えながら答えていた

基本的におキヌの友達である二人に対して、何かを言う事つもりがないのだ

それに余計な揉め事が嫌だと言う元々の性格もあるし、横島自身もおキヌに対しては複雑な感情を抱えている

幽霊時代から世話になったのは忘れてないし感謝もしてるが、今のおキヌには関わりたくない

その結果当たり障りのない返答で済ませるしかなかった



「お二人ともまだまだこれからですから、頑張ってくださいね」

横島の答えに魔理とかおりは困ったように顔を見合わせる中で、魔鈴は笑顔で二人にこれから頑張って欲しいと告げる

横島や魔鈴にとって今更謝られても答えようがなかったのだ

卒業パーティーの時に居たメンバーにはすでに話してしまったし、おキヌの問題を蒸し返しても答えなど出ないのだから



ピンポーン

その時、店の裏口の来客を知らせるインターフォンの音がした


「あら、いらっしゃい二人共。　いいタイミングよ」

来客は愛子とピートだった

愛子はいつものように勉強を教える為に来て、ピートは仕事帰りに偶然愛子に会って一緒に来たらしい


「いいタイミング？」

愛子とピートは首を傾げるが、応対に出たタマモは意味深な笑みを浮かべている



「やっほー、ケーキ買ってきたわ……よ？」

いつものように元気よく魔鈴宅のリビングに入る愛子だが、その重苦しい空気に一瞬で表情が固まってしまう

少し予断だが、愛子は現在魔鈴から家庭教師代として時給を貰っている

愛子は友達だから不要だと言ったのだが、魔鈴が気持ちだからと言って渡していた

学校外に出歩く事が増えればお金が必要になるし、困った時は助けて貰うからと魔鈴が半ば押し切る形で決まっていた



さて本題に戻って神妙な面持ちの魔理とかおりに加え重苦しい空気に、愛子とピートは来るタイミングがまずかったと感じる


「サンキュー愛子。　ちょっと待っててくれ」

横島は固まる愛子とピートに部屋のソファーに座るように促すと、再び魔理とかおりに視線を向けた


「俺も魔鈴さんも全然気にしてないからさ。　そんな事より、二人は来年卒業だろ？　将来どうするか知らんけど、今は自分の事考えて頑張ってな！」

これ以上話をややこしくしたくない横島は、全て過去の事だからと笑って話を終える

それ以上会話が続かなくなった魔理とかおりは、最後にもう一度謝ってタイガーに付き添われて帰っていく