梅雨の終わり

令子に対して正面からぶつかって自分の意志を最後まで貫いたのは、エミと魔鈴くらいである

他の人間は令子の気難しさや性格を知ると、自然と諦めや避ける事が多い

安易な妥協をせず自分の意志を貫いた魔鈴が、おキヌは無償に羨ましかった



その頃魔鈴宅では、帰って来た魔鈴が雪之丞と横島に破魔札について指導をしていた


「お二は破魔札の種類について詳しくご存知ですか? 破魔札は世界中にありますが、効果や値段は微妙に違うんですよ」

魔鈴は説明しながら二つの破魔札を横島達に見せるが、片方は横島達が良く知る日本語で書かれた物で片方は英語で書かれている

この違いはもちろん破魔札を作った国によって違うのだが、実は中身も違うのだと言う


「日本の破魔札は陰陽術から作られた物ですが、もう一つの英語のはイギリスで作られた物です。 こちらはキリスト教系の術から作られており、正確には違う物なんです」

効果はほとんど同じだが、根本の術が実は違う物だと魔鈴は説明していく

破魔札は世界中に存在するが、基本的に各地の宗教やオカルト技術により違うのである

値段と効果には一応一定の基準があるが物価や関税などによって値段は違うし、効果も作成国によって差が大いのが実態だった


「日本国内では関税の関係からほとんどは国内産の破魔札です。 ただオカルトGメンは、独自で破魔札を作ってるので違いますが……」

破魔破に関して日本は、ほぼ国内での生産と消費だけである

効果は世界でもトップクラスだが、物価も高いため値段も高いのだ

そしてオカルトGメンだが、こちらは独自で霊能アイテムを研究開発しているため破魔札も独自で作成している

物価の安い国で大量生産して各国のオカルト支部などで使うが、こちらは対外的に販売はしておらず独自で使うために関税がない

その為、安い破魔札をマシンガンなどにして大量に使用出来るようだった


「へ~、そんないろいろあるんすね」

「知らなかったな」

大人しく聞いていた横島と雪之丞だが、やはり知らなかったようで感心しながら聞いている

雪之丞は元々破魔札は使わないし、横島は厄珍堂で売ってる物以外知らないので仕方ないのだろうが……


「まあ知識の一つとして覚えておいて下さい。 外国などで仕事がある場合は、向こうで買った方が安くなる事もありますしね」

魔鈴が説明を続けると、横島と雪之丞は興味深げに二種類の破魔札を見ている

特に横島は同じ破魔札に種類があるなど思いもしなかったようだった


「他のアイテムも種類がたくさんあるんっすか? 神通棍とか見鬼くんとか?」

「ええ、世界各国で生産されてますからね。 生産国や生産する会社によって種類も性能も差があります」

「そう言えばザンスの事件の時、精霊石のなんとかがほとんどザンス産だって聞いた気が……」

魔鈴の話に横島は、ふとザンス事件に令子が似たような話をしていたのを思い出していた


「それは精霊石振動子ですね。 私もあまり詳しくありませんが、現代の霊能アイテムの心臓部なはずですよ」

「ああ、そんな名前だったな!」

名前も覚えてない横島に魔鈴は少し苦笑いを浮かべるが、それでも丁寧に説明していく


ちなみに脇で聞いてるだけのタマモの方が物覚えがよく詳しくなるのだが……

今のところ横島も雪之丞も気付いてなかった


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