梅雨の終わり

その日の放課後、弓かおりと一文字魔理は二人で密かに話をしていた


「私は魔鈴さん達に謝りにいくけど弓はどうする?」

「今更謝るのもムシが良すぎませんか?」

二人の話は魔鈴の事についてである

魔鈴の店で開かれていた卒業パーティーをめちゃくちゃにした魔理は、特別講師の前に謝った方がいいと考えて同じ立場のかおりに声をかけたらしい


「タイガーの話だと、魔鈴さんと横島さんはそんなに怒ってないってさ。 まあ私達がいけば怒るかもしれないけど、怒られても謝るのが筋だろ」

GS試験後にタイガーからその後の話などを聞いていた魔理は、ずっと謝りにいくタイミングを探していた

横島とおキヌの問題に余計な口出しした事や、横島の過去を好き勝手言った事も謝りたいらしい

この辺りはタイガーと和解した魔理が、かなり真剣に考えていた事である

自分の行動がタイガーにも迷惑をかけた事を気にしており、タイガーと交際を続けるなら早めに横島や魔鈴に謝罪する必要があると常々考えていたのだろう


「私は……」

魔理の意見にかおりは言葉が出てこなかった

謝る時期としては遅すぎるとかおりは思うし、謝りに行っても横島や魔鈴はともかく雪之丞は怒るだけで話にならないと思うのだ

元々謝るべきだという結論は同じ二人だが、タイガーと和解した魔理と雪之丞と自然消滅したかおりでは随分対応に温度差があった


「それに氷室さんはどうするんですの? 謝罪なら氷室さんへも必要だと思いますが……」

横島や魔鈴達への謝罪が必要なのは一致してる二人だが、やはり問題はおキヌへの対応である

おキヌが元気ならば素直に謝る方がいいだろうが、今のおキヌに横島達と問題を起こしたと言えばおキヌの精神的ダメージは計り知れないと考えていた

二人が卒業パーティー後にすぐに動けない理由が雪之丞とタイガーへの対応の他に、おキヌの問題もあったのだ


「やっぱ問題はおキヌちゃんか…… タイガーの話だと今だに会ってないみたいなんだ。 向こうからおキヌちゃんに会う予定はないらしい」

横島達の動きをある程度知る魔理は、おキヌと横島の問題が膠着したまま動かない事に苦慮している

自分達はおキヌが知らない現状や横島の想いを知るだけに、横島や魔鈴達に謝るのはいいがおキヌに謝るのは簡単ではない


「触れてはいけない事に触れましたからね」

魔理の説明にかおりは、改めて自分達がした事の重大さに気付いていた

横島がおキヌに対して、いつから不信感を抱いていたのか二人は知らないのだ

きっかけはルシオラだろうが、それが全てではないだろうと感じている


「美神さんを含めた元々の三人の関係がイマイチわからないんだけど、時給や待遇の違いって結構気にするよな」

唐巣や雪之丞から大まかな説明を受けた二人だが、今だに令子とおキヌと横島の関係がわからないでいる

ルシオラの件が爆発した決定打なのだろうが、不信や不満は元々あったのではと考えていたのだ

特にバイト経験がある魔理は、職場での些細な違いも不満の元になる事を理解している

仲間だの弟子だのいろいろあるのだろうが、違い過ぎる扱いなど細かな問題が多かったのではと考えていたようだ



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