梅雨の終わり

「確かに冥子さんには人と接する事が必要でしょうが、ボランティアも簡単ではありませんよ?」

簡単にボランティアと言っても多種多用あり、やる気があればいい訳ではない

冥子が悪い人でないのは理解してる魔鈴だが、人を助ける側のボランティアは難しいのではと思う


「大丈夫っすよ。 鬼道がなんとかしますって。 あいつは苦労してますからね~ うまく冥子ちゃんをサポートしますよ」

魔鈴の心配をよそに、横島は細かい事は全部鬼道に丸投げしている

魔鈴は鬼道はおキヌ達の担任をしてる霊能者だとは聞いた事があるが、詳しい事を全く知らないのでそれ以上言葉が続かなかった


(鬼道さんという方は大丈夫ですかね? 基本的に横島さんは説明が足りないですよね)

横島には全く悪気は無いが、鬼道にしてみれば面倒事が増えただけとも受け取れる

冥子と鬼道がどんな関係なのかは知らないが、せめて鬼道に一言説明くらい必要ではと魔鈴は思う


「冥子ちゃんは家の事情でGSをやらされてるみたいなんすよ。 詳しい理由とかはわからないんすけど、GSには向かないと思うんです。 金持ちだし無理に仕事するよりボランティアとかした方が、きっと冥子ちゃんには向いてますよ」

一応自分の考えを話していく横島だが、魔鈴は微妙に心配そうな表情をしている


(六道家の次期当主ですからね。 今は企業を多数抱えてますがオカルトが本業ですし、簡単に辞める訳にはいかないのでは……)

オカルト業界を牽引するべき六道家当主が、GSを辞めるのは難しい

しかしオカルト業界の常識が無い横島には、その辺りの考えなど全くないのだ

仕事は将来の旦那がすればいいかもしれないが、オカルト業界を代表する六道家当主がGSを辞めるなど周りが認めない事を横島は知らなかった

しかしこの横島の思い付きは、横島や魔鈴の予想もしない方向へと向かっていく事になる



「えっ!? ボランティア!? そういう事は理事長に相談した方が……」

一方突然冥子にボランティアがしたいと言われた鬼道は、意味がわからぬまま困っていた

基本的に冥子の考える事は子供っぽくて理解に苦しむ事もしばしばあるが、今回は何故ボランティアなどをしたいと言い出したのか理解出来ない


「しかし冥子はん、何故ボランティアなんかを?」

素直に疑問をぶつける鬼道だが、冥子の答えは予想もしないものだった


「みんな頑張ってるんですもの~ 冥子も何かしたいのよ~」

「みんな……?」

「令子ちゃんやエミちゃんとか、横島君や魔鈴ちゃんやタマモちゃんやシロちゃんとか、みんな頑張ってるの~ だから私も何かしたいの~」

鬼道は冥子の言葉の意味を掴みかねていた

今まで周りが何をしてもあまり興味を示さなかった冥子が、何故突然周りを気にするのかわからない


「冥子はん……」

「私って、何やっても失敗だかりだけど~ でもみんなのように何かをしたいの~」

鬼道は言葉が出ないほど驚愕する

何が冥子を変えたのか知らないが、冥子の中に微かな変化が現れているのだから



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