梅雨の終わり

次の日になり前日の試験で無事免許を取得した横島だが、やはり生活自体は変わってなかった

車を買うお金もないし、運転する予定もないのである

そしてそんな事とは関係なく、この日の店には冥子が訪れていた


「またお母様に怒られちゃったの~」

ちょっぴり落ち込んだ様子の冥子だが、彼女が母親に怒られて逃げて来るのは今月に入って3度目である

しかも冥子の場合は令子やエミの元にも同じように行って、同じような愚痴をこぼしてるらしい


「悪霊は怖くないのですよ。 彼らも好きで暴れてる訳ではありませんから……」

令子やエミが話半分聞いて終わるところを、魔鈴は毎回真剣に話を聞いてアドバイスしている

霊は怖い存在ではなく彼らを助けてやらねばならないなど基本中の基本を語る魔鈴だが、やはり冥子は怖い気持ちが変わらない

まあ魔鈴もわかってはいるが、助けを求める冥子を適当にあしらう事は出来なかった


(あのおばさんそんな怒るようには見えんがな~)

一方近くで話を聞いていた横島は、冥子の話をイマイチ信じる事が出来ないでいる

と言うか横島の中の冥菜は、冥子がそのまま年を重ねただなけというイメージだった


(なんか遊びに来る口実にしてる気が……)

かつての美神事務所時代の事を思い出す横島は、遊びに来たと言う冥子を令子が何度か忙しいからと言って追い返してた事を思い出す

まあ本当に忙しい時もあれば機嫌が悪い時もあり、理由は様々だが令子の性格では仕方ないだろう

そんな令子に対して冥子は、次第に母親に怒られたとか難解な依頼が来たと言って令子に会いに来るようになっていた

令子も理由があれば話くらいは聞くので冥子なりに考えたのだろうが、結局寂しかっただけなのではと横島は思う


「冥子ちゃんさ、悪霊が怖いならヒーリングとかのボランティアしたらどうだ? お年寄りとか病気の人にヒーリングしてあげれば喜ぶと思うけどな」

「横島君、本当~?」

突然妙な事を言い出した横島を、冥子は不思議そうに見つめる


「ああ、鬼道にでも相談してみろよ。 あいつなら多分わかると思うぞ」

「わかった。 冥子、まーくんにお話してみるわ~」

横島の突拍子もない話を聞いた冥子は、何故か嬉しそうな表情で帰っていく

そんな冥子を魔鈴は不思議そうに見つめていた


「横島さん、何故ボランティアなどを?」

ただの思い付きなのか深い考えがあるのかわからない魔鈴は、横島に話の真意を尋ねる


「冥子ちゃん寂しいのかなって思ったんすよ。 美神さんとかエミさん以外友達らしい人居ないみたいだし……」

「それはわかりますが、それとボランティアがどう関係するのですか?」

冥子が寂しさから理由を付けては来ている事は、魔鈴も気が付いていた

まあわかっていたからこそ、毎回同じ話でも付き合ってたのだろう


「誰かの役に立つ事とか、誰かに喜ばれる事って必要な気がするんです。 俺も店で働いて最近気が付いたんっすけどね」

冥子に足りないのは人との関わりやコミュニケーションだと思った横島は、冥子が多くの人と関わるためにボランティアをしたらどうかと言ったらしい


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