梅雨の終わり

あれから少し時が過ぎて6月末のこと

横島達四人と雪之丞・タイガー・ピート ・愛子の8人は妙神山に来ていた


卒業パーティー以来横島は週一くらいで妙神山に遊びに来ているが、タマモやシロや魔鈴も暇があれば同行している

そしてこの日は雪之丞達も妙神山に同行していた

一度妙神山に行ってみたいと言い出した愛子に加え、ピートやタイガーも将来的な修行を見据えて一度行ってみたいと思っおりみんなで妙神山に行く事になっていたのだ


「今日はまた随分と人が多いな横島」

妙神山の門の前に転移して来た横島達に、鬼門は慣れた様子で話し掛ける


「わっ!? 門がしゃべった!?」

一見飾りにしか見えないような鬼門が当然のように話し出した事に、愛子とタイガーは驚きの声を上げた

初めて来たのはピートも同じだが、以前に香港で鬼門に会ったピートはすぐにわかったようである


「久しぶりにまともな反応だな」

まともに驚かれた事に少し嬉しそうな表情をする鬼門、実は魔鈴達が初めて来た時に全く驚かれなくて少し寂しかったのだ

横島が事前に説明した訳ではないが、三人共すぐに鬼門に気がついたらしい

まあ別に驚かすのが趣味な訳ではないが、伝説の修行場の門番としてプライドがあるし少しは威厳ある態度を示したいらしい


「ここに来る霊能者は気付くんじゃないの?」

「昔は気付く者もおったが、最近はあんまり気付かん奴が多いのだ」

妙神山に来るような優秀な霊能者が自分達に気付かないような事を言う鬼門にタマモは少し不思議そうだが、それは霊能の技術自体が昔よりも劣っているからだった

霊視ゴーグルや見鬼くんなどの便利なアイテムが普及した現代の霊能者は、霊視や霊感をあまり鍛えてない為である


「とりあえず中に入れてくれよ。 お土産にケーキ持って来たんだ。 お前らも中に来て一緒に食おうぜ」

「お前は相変わらずだな」

少し威厳を示そうとしていた鬼門に対しても、横島は相変わらず友達感覚なのだ

伝説やプライドが横島と関わればたいした物に感じなくなる現状に、鬼門は微妙な笑みを浮かべていた


「ここが妙神山ですか……」

妙神山の中に入った一同だが、愛子やタイガーが観光気分で周りを見渡す側でピートは緊張気味である

ちょっと変わったメンバーが多い中で、神族に対して一般的な価値観を持つのがピートと魔鈴しかいない事が原因だろう


「ここは神族の領域だ。 本来は腕試しで勝たねば入れないし、遊びに来れるのも横島達だけだ」

緊張気味のピートの反応に鬼門は少し新鮮そうな表情で説明を始める

別に横島の対応が嫌な訳ではないが、横島の知り合いにしては普通の反応が新鮮なようだ


(やはり横島さんが特別なのでしょうね)

鬼門の説明にピートは改めて横島の特異性を感じる


本来は神族と人界の者が関わる事自体がありえないのだ

そんな中で妙神山は世界でも数少ない人間と神族が会う事を許された場所であるが、それは当然修行に限られていた

小竜姫がいくら人間に優しいとはいえ、個人で勝手に人間の観光など許可出来るはずがない

まあ妙神山の主である斉天大聖が認めている事が表向きな理由だが、裏には神魔界上層部の横島への特別な対応が隠れている事を知る者はいない


1/42ページ
スキ