白き狼と白き狐と横島
次の日京子の事務所を訪れた横島は、落ち着かない様子で応接室のソファーに座っていた
母親の友人で弁護士と言うだけで居心地の悪い感じを受けてしまう
「待たせてゴメンね。 さて話を聞かせて貰おうかしら」
忙しいらしく慌ただしく応接室に入って来た京子に、横島は緊張したままである
「そんなに緊張しないでいいわよ。 弁護士は依頼人を守るのが仕事だし、依頼人に不利益になる秘密は必ず守るわ」
なかなか緊張が解けない横島に対して京子は慣れた様子で語りかけていく
弁護士というだけで緊張されたり萎縮されるのも少なくないだけに、慣れた対応のようだった
「あの……、じゃあ何から話せばいいんすか?」
「そうね。 まずは西条輝彦氏との出来事を出来るだけ細かくお願いね」
横島は戸惑いながらも言われた通り西条との出会いから詳しく話していくが、その話の内容はまさに二人の微妙な関係を象徴するような難しいものだった
(最初にホテルを襲撃したのはまずいわね……)
令子の引き抜きから始まって西条のホテルへ襲撃した事まで聞いた辺りで、京子の表情が僅かに曇る
因縁の始まりはどちらかと言えば横島に問題があったのだ
しかし、その後は話の流れが変わっていく
美神事務所への虚偽の依頼で、西条が横島を呼び出した件である
「西条氏は何も持たない忠夫君に刀を抜いたのね?」
「はい……、そうですね」
思い出しながら語る横島の言葉に、京子は少しホッとしたような笑みを浮かべていた
「その後は乱戦ですかね。 俺は逃げながら美神さんの武器庫から持ち出した手榴弾を使ったトラップを仕掛けたり、西条が銃を発砲したりしたんで……」
横島の説明はそれからも淡々と続いて行き、京子はメモを取りながらその話を聞いていた
それから数時間後、外は夕方に差し掛かろうとしていた頃に横島の話は終わる
西条との事からアシュタロス戦まで全て話した横島の表情は、最初とは全く違う大人の表情をしていた
「忠夫君、美神令子氏と西条輝彦氏は訴えれば勝てるわよ。 少なくとも和解金は勝ち取れるわ」
「おふくろが何を言ったのか知らないっすけど、俺は美神さんや西条には関わりたくないだけです」
最後に今後の方針を話し合う二人だが、京子の予想に反して横島は冷静だった
「前は俺も悪かったですし、それに人の恨みって怖いもんすよ。 今の俺は魔鈴さんやタマモやシロを守れればそれでいいんです」
少し前まで落ち着かない様子だった横島が暗い闇のような瞳で語る姿は、京子ですら驚き言葉が出ない
職業柄いろんな人と出会って来た京子だが、横島の瞳はあまりに重く暗いものだった
「本当にそれでいいの? 西条氏の社会的地位を失墜させる事も難しくないわよ」
横島を見極めるように真剣に問い掛ける京子に、横島は僅かに困ったような笑顔を見せる
「興味ないっす。 と言うかこれ以上関わりたくないのかな?」
自分自身に問い掛けるように語る横島の姿は、年と似合わぬほど哀愁を漂わせていた
無論恨みや怒りはあるが、これ以上関わりたくない気持ちも確かにある
令子や美智恵や西条と決着を付ける事も考えた事があるが、横島にはその先にある結末が見えなかったのだ
母親の友人で弁護士と言うだけで居心地の悪い感じを受けてしまう
「待たせてゴメンね。 さて話を聞かせて貰おうかしら」
忙しいらしく慌ただしく応接室に入って来た京子に、横島は緊張したままである
「そんなに緊張しないでいいわよ。 弁護士は依頼人を守るのが仕事だし、依頼人に不利益になる秘密は必ず守るわ」
なかなか緊張が解けない横島に対して京子は慣れた様子で語りかけていく
弁護士というだけで緊張されたり萎縮されるのも少なくないだけに、慣れた対応のようだった
「あの……、じゃあ何から話せばいいんすか?」
「そうね。 まずは西条輝彦氏との出来事を出来るだけ細かくお願いね」
横島は戸惑いながらも言われた通り西条との出会いから詳しく話していくが、その話の内容はまさに二人の微妙な関係を象徴するような難しいものだった
(最初にホテルを襲撃したのはまずいわね……)
令子の引き抜きから始まって西条のホテルへ襲撃した事まで聞いた辺りで、京子の表情が僅かに曇る
因縁の始まりはどちらかと言えば横島に問題があったのだ
しかし、その後は話の流れが変わっていく
美神事務所への虚偽の依頼で、西条が横島を呼び出した件である
「西条氏は何も持たない忠夫君に刀を抜いたのね?」
「はい……、そうですね」
思い出しながら語る横島の言葉に、京子は少しホッとしたような笑みを浮かべていた
「その後は乱戦ですかね。 俺は逃げながら美神さんの武器庫から持ち出した手榴弾を使ったトラップを仕掛けたり、西条が銃を発砲したりしたんで……」
横島の説明はそれからも淡々と続いて行き、京子はメモを取りながらその話を聞いていた
それから数時間後、外は夕方に差し掛かろうとしていた頃に横島の話は終わる
西条との事からアシュタロス戦まで全て話した横島の表情は、最初とは全く違う大人の表情をしていた
「忠夫君、美神令子氏と西条輝彦氏は訴えれば勝てるわよ。 少なくとも和解金は勝ち取れるわ」
「おふくろが何を言ったのか知らないっすけど、俺は美神さんや西条には関わりたくないだけです」
最後に今後の方針を話し合う二人だが、京子の予想に反して横島は冷静だった
「前は俺も悪かったですし、それに人の恨みって怖いもんすよ。 今の俺は魔鈴さんやタマモやシロを守れればそれでいいんです」
少し前まで落ち着かない様子だった横島が暗い闇のような瞳で語る姿は、京子ですら驚き言葉が出ない
職業柄いろんな人と出会って来た京子だが、横島の瞳はあまりに重く暗いものだった
「本当にそれでいいの? 西条氏の社会的地位を失墜させる事も難しくないわよ」
横島を見極めるように真剣に問い掛ける京子に、横島は僅かに困ったような笑顔を見せる
「興味ないっす。 と言うかこれ以上関わりたくないのかな?」
自分自身に問い掛けるように語る横島の姿は、年と似合わぬほど哀愁を漂わせていた
無論恨みや怒りはあるが、これ以上関わりたくない気持ちも確かにある
令子や美智恵や西条と決着を付ける事も考えた事があるが、横島にはその先にある結末が見えなかったのだ