終わりと始まり

その頃魔鈴の店では横島達が店内の掃除を初めていた

令子が暴れたりした為、店内のあちこちが壊れたり散らかったりしているのだ


「大変だったみたいだな…」

そんな時、店に入って来たのは雪之丞である


「ああ、こっちはやっと終わったよ。 後は美智恵さんだけだな…」

少し苦笑いを浮かべて横島は、もう一人の要注意人物である美智恵もなんとか決着をつけなくてはと思っていた


「その必要はねぇよ」

意味ありげな笑顔を向ける雪之丞を横島は不思議そうに見つめる


「よう! 馬鹿息子! 相変わらず冴えない顔してるな~」

先ほどまでの緊張感のカケラも無い大樹は、横島をからかうように店に入って来た


「親父!?」

突然現れた大樹に横島は戸惑い、何故雪之丞と一緒に居るのかわからない


「あらあら… 結構荒らされたわね」

大樹より少し遅れて店に入ってきた百合子を見て、横島は更に混乱してしまう


「横島のお母さんとお父さん…」

「先生のご両親でござるか?」

近くに居たタマモとシロはキョトンとした表情でその様子を見ている


(随分タイミングがいいわね… 美神が帰ったすぐ後に来るなんて…)

タマモはタイミングの良さと、先ほど雪之丞が美智恵の事を必要無いと言った言葉に引っかかっていた


「初めまして… 私は魔鈴めぐ……」

初対面の大樹に挨拶しようとした魔鈴に、大樹はすかさず近寄り手を握る


「初めまして、横島大樹です。 こんな美しいお嬢さんと出会えるなんて…」


パコーン!


「やめんかー!」

「あなた…」


魔鈴を口説きそうな大樹に横島と百合子のツッコミが入った


「アッハハ! 冗談だよ冗談!」

殺気立つ横島と冷たく睨む百合子に大樹は笑顔で返す


「あの…」

不思議な家族の会話に魔鈴は何と言っていいかわからない


「あらごめんなさいね。 とりあえず手伝うから、さっさと片付け済ませちゃいましょう。 お互いいろいろ話をしなければならないしね」

百合子はそう微笑み散らかった店内を片付け出す


「いや… 片付けは私がしますから」

突然片付け出す百合子を、魔鈴が心苦しく思い止めようとするのだが


「遠慮は要らないわよ。 他人じゃなくなるかもしれないしね」

意味ありげな笑みを向ける百合子に、横島と魔鈴は顔を赤くして言葉に詰まる


(どうやら進展したようね)

笑みを浮かべたまま片付ける百合子は、横島と魔鈴の空気の違いを敏感に感じていた


「忠夫… お前に彼女が出来るとは、父さんは嬉しいぞ! お前には一生無理だと思っていたのにな~」

どうやら横島の前では真面目に振る舞うつもりの無い大樹

完全に横島をからかって楽しんでいた



「変わった両親ね…」

「昔の先生と似てるでござるな~」

横島や魔鈴と話す百合子と大樹を見て、タマモはやはり両親が来たのには意味があると確信しつつ、息子で遊ぶ大樹を不思議そうに見ている

一方シロは大樹の軽い口調や行動に、昔の横島を思い出していた


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