白き狼と白き狐と横島

「あら、この店知ってるわよ。 前にクライアントに誘われて来た事あるわ」

弁護は会わないと判断出来ないと言う京子と横島を会わせる為に、百合子は昼食を魔鈴の店に誘っていた

タクシーで店まで来た二人だが、京子は以前に来た事があるようである


「ここのオーナーシェフが忠夫の彼女なのよ。 忠夫も今はここで働いてるわ」

「へ~、そうなんだ。 GS辞めたって噂は聞いたけど、まさかレストランで働いてたなんてね」

タクシーを降りた百合子は簡単に魔鈴と横島の関係を話すが、聞いている京子は少し驚きの表情だった

仮にも世界を救った中心人物が、レストランの従業員とは少し意外にようである


「母上殿、いらっしゃいでござる」

「シロちゃん個室空いてるかしら? それと時間が開いたら忠夫に来るように言ってちょうだい」

フロアで接客していたシロと話した百合子は、京子と個室で昼食を食べながら横島を待つ事にしていた


「それで、相手は誰なの? まかさ六道だなんて言わないわよね?」

食事をしつつ横島が来る前に事情を聞きはじめた京子は、笑いながら冗談半分で問い掛ける

日本有数の企業グループである六道家の本業が、オカルトなのは普通に有名だった

横島の敵と言われてもすぐに思い浮かばない京子は、オカルト業界そのものを敵に回してるのかと疑っていたのだ

普通は有り得ない事だが、百合子の場合は有り得ないと言い切れないのだろう


「六道は無関係じゃないけど敵じゃないわ。 相手はこの人達よ」

ニコニコと笑顔の京子に、百合子は険しい表情で美智恵と西条の写真を見せていた


「オカルトGメン!? なんで国際警察を敵に回してるの?」

美智恵と西条の写真に、さすがの京子も驚きを隠せないようである

国際警察でありアシュタロス戦の英雄として知名度が高い美智恵と西条を敵に回すなど、さすがに思わなかったようだ


「さっき貴女が言った核ジャックと大霊障には、隠された裏があるのよ」

「裏? 忠夫君の功績を横取りされた事?」

固い表情で語り出す百合子に京子は驚きの声をあげる


実は京子が知る事実は、本当の真実の一部なのだ

アシュタロス戦に関して横島がアシュタロスを討伐した中心人物だという事は、比較的裏事情に詳しい人なら知っている


しかしそれ以上の真実に関しては、各国首脳クラスやオカルト業界のごく一部しか知らない

特に令子とアシュタロスの関係は、厳重に情報管理がされていた

元々横島がアシュタロス戦に関わっていた事は、オカルトGメンの指揮下に入っていた警察関係者やGS関係者なら比較的知っているのだ

人類の裏切り者の報道やその後の潜入捜査だと言う訂正報道からもわかるように、現場に近い人間ならば横島が前線で戦っていたのは比較的知られていた


その結果同じように隠蔽された情報だが、その扱いはまるで違う

横島の件に関しては本人の意思により報告書から削除された事になっているが、それ以上の秘密に関しては秘密自体が無かった事になっている


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