白き狼と白き狐と横島
それから更に数日が過ぎたある日、百合子は都内のある弁護士事務所に来ていた
「久しぶりね、百合子。 最近また派手に動いてるらしいわね。 村枝の紅ゆりが仕事復帰するんじゃないかって、もっぱらの噂よ」
クスクス笑みを浮かべて百合子をからかうように話す女性は、如月京子という弁護士である
百合子とは大学の同期からの付き合いで、当時の百合子と同じく50年に一人の天才と騒がれたほどの人物だった
その見た目は穏和で軟らかな感じであり、きつい感じの百合子とは対照的な美人である
「今の私はただの主婦で母親よ。 出来の悪い息子を持つと苦労が絶えないわ」
京子の言葉に表情が緩んだ百合子は、珍しく他人に本音を語っていた
なかなか他人に本音を語る事のない百合子だが、旧友である京子は特別のようである
「貴女の息子で出来が悪いなら他はどうなるのよ。 世界を救った息子を出来が悪いと言うのは可哀相な気がするわ」
「やっぱり知ってたわね」
京子がアシュタロス戦の真実を知っていたことに、百合子は全く驚く様子はなかった
「まあね。 職業柄いろいろ情報は入ってくるから。 それに忠夫君は裏じゃ有名人よ。 あれだけの事をしたんですもの。 知らない方がおかしいわ」
一般には知られてない横島の情報を簡単に掴んでいる京子は、実はかなり知名度が高い弁護士である
専門は主に刑事事件における被告人の弁護であるが、被害者の弁護や企業の弁護も行う多角的な弁護士だった
そしてかつて百合子が現役の時代には、百合子と組んで様々な仕事を共にこなした仲間でもある
「霊能はどうか知らないけど、他は困った息子なのよ。 脇が甘いって言うか、常識が無いって言うか……」
自分の息子の規格外な現状には、百合子もやはり苦労していたようだ
美智恵に対しては警戒していたし最低限の対応が出来た横島だが、その他に関しては対応が全然ダメだと思っているようである
「昔の貴女と比べたら可哀相よ。 まだ若いんだしこれから伸びるわよ」
「だといんだけどね……」
かつての友との再会にお互い話題は尽きないが、そんな話の中心はやはり横島の問題だった
「それで頼みって何? また仕事するの?」
一時間くらい話しただろうか、会話が一段落したところで京子は本題に入る
「まさか、私は気ままな主婦が好きなの。 頼みたいのは忠夫の事よ」
冗談半分で仕事復帰をするのかと尋ねた京子に、百合子はまるでやる気がないといった感じである
「京子には忠夫の顧問弁護士になってほしいの。 昔の私ほどじゃないけど、あの子も敵が多くてねぇ」
困ったように苦笑いを浮かべる百合子の言葉に、京子は少し考えるように無言になってしまう
実はかつてスーパーOLと言われた時代の、百合子の顧問弁護士が京子である
男を相手に活躍するのは簡単ではないし、いかに百合子が優秀だったとはいえ敵も多かった
そんな百合子の顧問弁護士として、数々の訴訟や交渉を担当したのだ
「うーん、私は気に入った人の弁護しかしないのよね。 忠夫君と会ったのは赤ちゃんの時以来だし……」
突然弁護を頼まれた京子は、横島を知らないがゆえに迷っているようであった
「久しぶりね、百合子。 最近また派手に動いてるらしいわね。 村枝の紅ゆりが仕事復帰するんじゃないかって、もっぱらの噂よ」
クスクス笑みを浮かべて百合子をからかうように話す女性は、如月京子という弁護士である
百合子とは大学の同期からの付き合いで、当時の百合子と同じく50年に一人の天才と騒がれたほどの人物だった
その見た目は穏和で軟らかな感じであり、きつい感じの百合子とは対照的な美人である
「今の私はただの主婦で母親よ。 出来の悪い息子を持つと苦労が絶えないわ」
京子の言葉に表情が緩んだ百合子は、珍しく他人に本音を語っていた
なかなか他人に本音を語る事のない百合子だが、旧友である京子は特別のようである
「貴女の息子で出来が悪いなら他はどうなるのよ。 世界を救った息子を出来が悪いと言うのは可哀相な気がするわ」
「やっぱり知ってたわね」
京子がアシュタロス戦の真実を知っていたことに、百合子は全く驚く様子はなかった
「まあね。 職業柄いろいろ情報は入ってくるから。 それに忠夫君は裏じゃ有名人よ。 あれだけの事をしたんですもの。 知らない方がおかしいわ」
一般には知られてない横島の情報を簡単に掴んでいる京子は、実はかなり知名度が高い弁護士である
専門は主に刑事事件における被告人の弁護であるが、被害者の弁護や企業の弁護も行う多角的な弁護士だった
そしてかつて百合子が現役の時代には、百合子と組んで様々な仕事を共にこなした仲間でもある
「霊能はどうか知らないけど、他は困った息子なのよ。 脇が甘いって言うか、常識が無いって言うか……」
自分の息子の規格外な現状には、百合子もやはり苦労していたようだ
美智恵に対しては警戒していたし最低限の対応が出来た横島だが、その他に関しては対応が全然ダメだと思っているようである
「昔の貴女と比べたら可哀相よ。 まだ若いんだしこれから伸びるわよ」
「だといんだけどね……」
かつての友との再会にお互い話題は尽きないが、そんな話の中心はやはり横島の問題だった
「それで頼みって何? また仕事するの?」
一時間くらい話しただろうか、会話が一段落したところで京子は本題に入る
「まさか、私は気ままな主婦が好きなの。 頼みたいのは忠夫の事よ」
冗談半分で仕事復帰をするのかと尋ねた京子に、百合子はまるでやる気がないといった感じである
「京子には忠夫の顧問弁護士になってほしいの。 昔の私ほどじゃないけど、あの子も敵が多くてねぇ」
困ったように苦笑いを浮かべる百合子の言葉に、京子は少し考えるように無言になってしまう
実はかつてスーパーOLと言われた時代の、百合子の顧問弁護士が京子である
男を相手に活躍するのは簡単ではないし、いかに百合子が優秀だったとはいえ敵も多かった
そんな百合子の顧問弁護士として、数々の訴訟や交渉を担当したのだ
「うーん、私は気に入った人の弁護しかしないのよね。 忠夫君と会ったのは赤ちゃんの時以来だし……」
突然弁護を頼まれた京子は、横島を知らないがゆえに迷っているようであった