白き狼と白き狐と横島

それから数日が過ぎたが、横島達も西条も互いに平和な日常を送っていた

美智恵も百合子も情報収集と分析はするが、互いに簡単には動けない状況である


そしてオカルトGメンの心霊捜査だが、こちらは連続殺人事件から完全に撤退していた

西条が横島達と揉め事を起こした結果、美智恵は百合子の介入を警戒して警察庁側との和解を急いだのである

最も表向きは捜査協力の継続中になっているし、心霊捜査の撤退も公表されてない

それにマスコミや世論への対策は引き続き協力しており、オカルトGメンも警察庁も今回の事件による捜査の混乱や対立を表沙汰にしたくない意向が強く働いている


次に連続殺人事件の方だが、こちらはここ数日新たな被害者が現れていなかった

警視庁側は大量の捜査員を動員した結果、犯人が犯行をためらっていると予測していたが詳しい理由はわからないままである

犯人の方も次々に可能性のある人物は浮かんではいたが、逮捕までに至る決定的な証拠は最後まで得られない状況だった



「結局、美神美智恵の目的は掴めなかったわね」

西条と心霊捜査の裏を調べていた百合子だが、やはり美智恵の目的は掴めないままである


「西条輝彦の単独行動の可能性も否定出来ないのよね……」

警視庁側の裏事情を調べた百合子は、西条がかなり心霊捜査を熱心に売り込んでいた事実を突き止めていた

その一方で美智恵は、心霊捜査の正式導入にかなり慎重なのも掴んでいる

この一件を横島達と関係無く見ると、西条が単独で手柄と実績を作ろうとした可能性が高いのだ


「もう一つ面白い情報を掴んだわね」

西条と警視庁の関係を調べた百合子は、今回の問題に関係は無いが面白い資料を手に入れていた

それはザンス過激派による、国王襲撃事件の報告書である

以前百合子が横島の過去を調べた時にもある程度の情報は得ていたが、今回はザンス過激派事件の時の詳細な記録が手に入っていた


「横島忠夫氏の誤認逮捕についてか……」

あの事件の解決と共にうやむやにされ揉み消された様々な事実と共に、横島の誤認逮捕の件もうやむやにされていたのだ

しかし警視庁では事件後に検証や総括はしっかり行っており、今回はその資料が新たに手に入っている


報告書には通常のSPの限界とオカルトテロへの対策の遅れなど、あくまで内部資料として様々な検証や提言が行われていた

その中には誤認逮捕についての事実と検証もあり、あの誤認逮捕について警視庁側が当初は、未成年の横島を任意同行する手筈だった事も記されている


その任意同行が何故逮捕に繋がったかと言えば、原因はやはり西条であった

事件がオカルト絡みな為、オカルトGメンの西条が半ば強引に捜査の指揮権を主張して横島の自宅への家宅捜索などを行っていたのだ

結果として横島本人への事情聴取やアリバイ確認もないまま逮捕に至っている

背景には逮捕を急がせた政府の圧力もあったが、横島ならばやりかねないと言う西条の強引な意見により逮捕されていたのだ


「オカルトGメンも人手不足なんでしょうね、こんな馬鹿を支部長にしてたなんて……」

ただ呆れるしかない百合子は、西条と横島の関係を洗い直そうと決めていた
36/55ページ
スキ