その後西条は横島とのやり取りも簡単に説明するが、話を聞けば聞くほど美智恵の表情は強張っていく


「西条君、今後横島君達への接触はしないでちょうだい」

あまりにも自分に都合良く物事を解釈する西条に、美智恵は半ば怒りを感じながらも無表情で今後横島に関わるなと告げる

美智恵としては元々西条が事件を解決しようとしたのは正義感や使命感であり、熱心に捜査するのは悪い事ではないと考えていた

しかし西条のあまりにもマズイやり方に、困り果てていたのも事実である


「先生、横島君と何かあったのですか？　魔鈴君も僕には知らない事があると言ってましたが……」

珍しく感情が顔に出ている美智恵に、西条は少し疑問を感じていた

それに横島の話の時の美智恵は、西条が知らないような複雑な表情だったのである


「私は横島君には令子の元に居て欲しかった。　それだけよ」

一瞬迷いの表情を浮かべた美智恵は、一言だけ告げてそれ以上説明する事はなかった


（何かあったのは確かだな……）

美智恵の表情と言葉に西条は自分の知らない裏があると感じるが、それが何なのかはわからない


（本当に余計な事をしてくれたわね。　今更、横島君を引き込んでも得るモノはないのに……　いつ爆発するかわからない爆弾なんて要らないのよ）

一方、美智恵は無言のまま今後の対策を考え初めていた

意外かもしれないが、美智恵は現状の横島を手元にほしいとは思ってない

それどころかオカルトから距離を開けてる横島の姿勢は、美智恵にとって好都合だった

無論横島に対しての怒りや恨みなど複雑な感情はあるが、実際問題としてこれ以上横島と対立しても美智恵に得るモノなどないのだ

横島本人は相変わらず未知数な部分が多いが、真実を知る両親が黙ってるはずがない

それに加え小竜姫が裏でＧＳ協会に圧力をかけた事も影響している

下手に横島と争うと、神族を敵に回すような格好になってしまうのだ

まあ神族を敵に回してもいいほど得るモノがあれば違うのかもしれないが、現状で横島と争ってもアシュタロス戦の真実が世間に知れたら困るのは美智恵である

横島が昔のように令子を求める可能性が低い今、美智恵が横島と対立する理由はない


（全く、私や令子と関わらないでほしいのに……）

西条に対して、横島と関わる事を禁止しなかった自分が甘かったと美智恵は悔やむがすでに遅かった

この後の横島側の動き次第では、再び全面対決にも成り兼ねない


（なんとか事態を納めなくては）

最早美智恵にとって、心霊捜査や西条の違法捜査はどうでもよかった

西条のとばっちりで意味のない争いをするのだけは避けたいのだ