「いろいろ言い過ぎたかな？　まあ今すぐ決める必要ないし、みんなゆっくり考えてみてくれよ」

驚きや戸惑いながら考え込んでいる一同を前に、横島は少し申し訳なさそうにゆっくり考えて欲しいと伝えていた

自分の考えを好き勝手に言った事は、横島としては少し後悔している

しかしタマモやシロや愛子にとっては、いずれ考えるべき事だと横島は確信していた

ゆっくり時間をかけて、自分なりの答えを出してほしいと密かに願っている



一方魔鈴の店を後にした西条は、何故か深夜の海に来ていた

本当は時間を無駄にする余裕などないのだが、魔鈴に言われた言葉が気になり何もする気が起きない

深夜にも関わらず明るい都会の空と、真っ黒な闇のような海を見つめていた西条は何がどうなっているのか考え初めていた


「残念か……」

年下の横島に対しての対応を残念だと言われた事が頭から離れない西条は、ふと何故横島とあんな関係になったのか考え初めていた

馬鹿でお調子者でどうしようもない少年と言うのが、横島のイメージである


「相手にするレベルじゃなかったのは確かだな」

出会った当初を思い出していくが、やはり相手にする対象ですらなかったと言うのが西条の考えだ

当時の令子が横島に心を開いていた事が始まりの原因なのは理解しているが、数年会ってなかった西条に遠慮していたとも言える

今から思うと西条自身も、何故あんなに横島にこだわったのか不思議な気がする事だった


「あんなに礼儀知らずの馬鹿なんて、横島君以外関わった事なかったからな」

昔から基本的に自分の価値観で他人を判断する西条なだけに、世間的に落ちこぼれと言われる部類の人と関わる事が全くなかったのだ

まあ裕福な家に生まれた西条の周りに居た人間は、同じように裕福な人間だけしか居なかったので関わる環境がなかったとも言えるが

西条にとって横島は考えや行動が全て真逆で、全く理解出来ない存在だった


「まあ横島君はどうでもいいか」

悲しそうな魔鈴の表情を思い出すと心が痛くなるが、やはり西条にとって横島はどうでも存在であり

わざわざ助けたいとも思わないし、考えるだけで不快な気持ちにもなる


（それよりも魔鈴君が言った知らない事の方が来になるな。　それに捜査もなんとかしないといけないし……）

魔鈴がオカルトＧメンへの協力を拒否するなど、よほどの事情があると思う

しかし西条には全く思い当たる事はないし、まさか美智恵が横島の辞めた件に関わっていたとは思いもしない

美智恵が横島を評価しているのは知っているが、西条自身は横島を評価してないためまさか令子の元に置くために動くとは思いもしないのだろう


そんな調子でいろいろ考えていく西条だが、結局は目の前の事件の解決が一番の問題である

まあ事件の捜査を出来るのは明日の出勤までなのでタイムリミットがないのが主な理由だが、結局横島がどうでもいいと言う潜在意識も無関係ではないだろう

魔鈴に関してはオカルトＧメンの仕事はともかく、個人的な裕福な友人関係を否定された訳ではないのが大きい


「最後まで諦めないで捜査するか」

少し頭の整理がついた西条は、そのまま残りの時間で捜査をするために街に戻って行った