白き狼と白き狐と横島
「魔鈴君、リスクがあるのは承知で頼む! 君の力が必要なんだ!!」
ますます熱く語る西条とは対象的に、魔鈴は冷静に考え込んでいる
(やっとわかりました。 西条先輩の横島さんへのおかしな扱いの理由が……)
それは魔鈴がずっと不思議だった事だった
弱者など立場の弱い者を助ける西条が、何故横島に対しては不当とも言える扱いをしたのか
その原因に令子を巡る個人的な争いがあったのは以前から気が付いていたが
それ以上に根本的な問題として、西条は弱者や被害者など立場の弱い者の気持ちや心情をまるで理解してないのだ
(西条先輩が見てるのは弱者じゃないんですね)
自分と同じように人々の役に立ちたいと思っていたはずの西条の根本がまるで違う事に、魔鈴はショックだった
西条が見てるのはおそらく、弱者ではなく自分自身なのだろうと魔鈴は思う
「西条先輩…… 事件の解決も大切ですが、被害者の事も考えて下さい。 ようやく眠りについた魂に、再び死の苦痛と恐怖を思い出させるのはあまりに酷です」
「魔鈴君……」
正義感に溢れ理想に燃えていた西条が見たのは、悲しそうな魔鈴の表情だった
西条が今までに見たことがないほど悲しそうな魔鈴の表情に、西条の心は少し静まっていく
「だが現実問題として、事件を解決しなければ被害者はまだまだ出るんだぞ。 それに警察に協力するのは民間人の義務だろう」
魔鈴の心からの訴えも西条には届かなかったようだ
少し落ち着いて一瞬考える西条だが、現実問題として事件が解決しなければ被害者は増えていく事に変わりはない
西条としてはそれは見過ごせないようである
「申し訳ありませんが、私は降霊には協力出来ません。 それにシロちゃんとタマモちゃんも協力はさせません」
魔鈴は自分の言葉が西条に届かなかった事に少し悔しさを感じるが、それ以上に失望も大きかった
(目指す理想があまりに違い過ぎる)
物事を見る視点から目指す理想まで、魔鈴と西条は全く違っている
個人を一人一人見る事で全体を見ようとする魔鈴と、全体を見る事で個人を見ようとする西条では一見同じような理想を持ってるように見えるが、全く違う理想だったのだ
「まっ魔鈴君!?」
今までに見たことがないような悲しげで冷めた表情の魔鈴に、西条は驚きその理由がわからない
「シロちゃんとタマモちゃんの件は、いかなる理由があろうと始めから無理なんです。 それは私と横島さんで決めた事ですから」
「いかなる理由があろうともって…… 何故だ!? 報酬はしっかり払うし、無理はさせない!」
降霊に続きシロとタマモの協力まで断られた西条は、声を荒げて魔鈴に理由を問い掛ける
元々西条としては、二人を説得するだけの報酬を払うつもりだったのだ
横島との関係もあり自分が好かれてないのは知っているが、西条にとってこの事件は個人のいさかいの問題ではない
仮に横島が反対するなら、横島に対しても仲介料の名目で謝礼を払ってでもいいとさえ考えていた
仮に降霊に関しては問題が多い事から断られてもしかたないと思うが、二人の協力に関しては断られるだけの理由がわからない
西条は西条で己の理想と正義の為に、妥協してでも結果が欲しかった
横島の事は相変わらず気に入らないが、心霊捜査導入と事件解決を天秤にかけるとある程度の金を払って黙らせようと考えていたようだ
ますます熱く語る西条とは対象的に、魔鈴は冷静に考え込んでいる
(やっとわかりました。 西条先輩の横島さんへのおかしな扱いの理由が……)
それは魔鈴がずっと不思議だった事だった
弱者など立場の弱い者を助ける西条が、何故横島に対しては不当とも言える扱いをしたのか
その原因に令子を巡る個人的な争いがあったのは以前から気が付いていたが
それ以上に根本的な問題として、西条は弱者や被害者など立場の弱い者の気持ちや心情をまるで理解してないのだ
(西条先輩が見てるのは弱者じゃないんですね)
自分と同じように人々の役に立ちたいと思っていたはずの西条の根本がまるで違う事に、魔鈴はショックだった
西条が見てるのはおそらく、弱者ではなく自分自身なのだろうと魔鈴は思う
「西条先輩…… 事件の解決も大切ですが、被害者の事も考えて下さい。 ようやく眠りについた魂に、再び死の苦痛と恐怖を思い出させるのはあまりに酷です」
「魔鈴君……」
正義感に溢れ理想に燃えていた西条が見たのは、悲しそうな魔鈴の表情だった
西条が今までに見たことがないほど悲しそうな魔鈴の表情に、西条の心は少し静まっていく
「だが現実問題として、事件を解決しなければ被害者はまだまだ出るんだぞ。 それに警察に協力するのは民間人の義務だろう」
魔鈴の心からの訴えも西条には届かなかったようだ
少し落ち着いて一瞬考える西条だが、現実問題として事件が解決しなければ被害者は増えていく事に変わりはない
西条としてはそれは見過ごせないようである
「申し訳ありませんが、私は降霊には協力出来ません。 それにシロちゃんとタマモちゃんも協力はさせません」
魔鈴は自分の言葉が西条に届かなかった事に少し悔しさを感じるが、それ以上に失望も大きかった
(目指す理想があまりに違い過ぎる)
物事を見る視点から目指す理想まで、魔鈴と西条は全く違っている
個人を一人一人見る事で全体を見ようとする魔鈴と、全体を見る事で個人を見ようとする西条では一見同じような理想を持ってるように見えるが、全く違う理想だったのだ
「まっ魔鈴君!?」
今までに見たことがないような悲しげで冷めた表情の魔鈴に、西条は驚きその理由がわからない
「シロちゃんとタマモちゃんの件は、いかなる理由があろうと始めから無理なんです。 それは私と横島さんで決めた事ですから」
「いかなる理由があろうともって…… 何故だ!? 報酬はしっかり払うし、無理はさせない!」
降霊に続きシロとタマモの協力まで断られた西条は、声を荒げて魔鈴に理由を問い掛ける
元々西条としては、二人を説得するだけの報酬を払うつもりだったのだ
横島との関係もあり自分が好かれてないのは知っているが、西条にとってこの事件は個人のいさかいの問題ではない
仮に横島が反対するなら、横島に対しても仲介料の名目で謝礼を払ってでもいいとさえ考えていた
仮に降霊に関しては問題が多い事から断られてもしかたないと思うが、二人の協力に関しては断られるだけの理由がわからない
西条は西条で己の理想と正義の為に、妥協してでも結果が欲しかった
横島の事は相変わらず気に入らないが、心霊捜査導入と事件解決を天秤にかけるとある程度の金を払って黙らせようと考えていたようだ