卒業の意味

数日後…

まだ肌寒さが残るが、穏やかな春の日差しが街に降り注ぐこの日

横島は制服に身を包んで最後の学校に登校しようとしていた


「横島さん、後で私達も見に行きますからね」

魔鈴とタマモとシロは、少し恥ずかしそうな横島を笑顔で見ている


「はい、行って来ます」

笑顔で学校に向かう横島を見送る魔鈴達は、平穏な毎日に幸せを感じていた


「いろいろありましたけど… 今日この日を平穏に迎えられて本当によかったですね」

「ええ、横島もようやく普通の人間らしくなって来たわ」

この数ヶ月を魔鈴とタマモは感慨深げに思い出す


心の奥底まで永遠に消えない深い深い傷を負った横島は、周りの全てが信じられずに、自分の心すら騙して道化を演じていた

そんな心も体も限界を越えてる状態にも関わらず、全て自分一人で背負い込んでいた日々

あの時の横島を思い出すと、よくここまで辿り着けたとしみじみ思う


「先生の表情が随分良くなったでござるな~」

一人詳しい事情を知らないシロも、横島が普通に笑う姿に喜びを感じていた


「さあ、私達は出掛ける前に夜の下準備をしましょうね」

「うん」

「わかったでござる!」

横島の後ろ姿が見えなくなった頃、魔鈴達は店に戻っていく

店の入り口には本日臨時休業の看板を掲げて



一方ゆっくり学校に歩いてゆく横島は、いろいろなことを思い出していた


(本当に濃い3年間だったな…)

たくさんの人との出会いもあり、そして別れもあった…

二度と経験出来ないような、摩訶不思議な体験も何度も経験した

いったいだれがこんな高校生活になると予想しただろうか


「少しだけ贅沢を言えば、もう少し高校生活を楽しみたかったな… 修学旅行や文化祭もバイトで休んだし…」

高校生活と言う意味では、ほとんど無いに等しかった気がしていた

自業自得で薄給のバイトをしたとはいえ、日々の食べる物に困る生活な上、学校では変人扱い

周りの普通の高校生を見るとうらやましい気持ちもあった


「まあ、その生活のおかげで普通じゃ会えない人達に会えたしな…」

だが、全て後悔している訳では無い

小竜姫やワルキューレ達神魔や、タマモやシロや愛子などの妖怪達

そして、ルシオラと魔鈴と言う二人の最愛の存在

今の自分には欠かせない大切な仲間達に会えた


仮にもう一度人生をやり直すとしても、自分はGSを目指すだろう

そんな大切な人達に会いたいから…


(ルシオラ… 高校卒業だよ。 ここにお前が居ればな…)

やはり、横島が悔やんでも悔やみきれないのはルシオラの事

パズルの最後の1ピースだけが足りないように、横島の中ではルシオラが足りない


(後悔ばっかしててもダメだよな… 必ずお前を復活させてやるからな!)

自分の心に気合いを入れて、横島は学校へ急ぐ


横島の心の傷は未だに消えてない

いや、これは横島が一生背負って行くものだろう

例えルシオラが復活した後でも…


しかし、魔鈴達や雪之丞や両親などたくさんの人達の支えにより、横島はそれを背負っても前に進み初めていた


この横島の一歩を誰よりも一番喜んでいるのは、他ならぬルシオラ本人だろう

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