ただ今修行中!?

「オカルト業界がやけにあっさり忠夫から手を引いたかと思えば、結局持て余したんだな」

六道家から提供された資料には、横島に関してのオカルト業界での関心度や立場もあった

文珠使いとしての能力は何処も高く評価しており、関心度は高いが美神家絡みの揉め事には誰も関わりたくない

実際横島を雇用または派閥に入れる事は可能ではあるが、美神家と後々まで対立する可能性も高い

何か黒い噂の絶えない美神家と関わりたい業界関係者は少なく、美神家は六道家とも繋がるために誰も手を出さない結果となっていた


「この妙神山の小竜姫様って、忠夫と親しい神様よね」

百合子が見ている資料には、オカルト業界が横島に手を出さないもう一つの理由があった


「ああ、理由はわからんがGS協会に圧力をかけたようだな。 GSを辞めた後、小竜姫様が自らGS協会に釘を刺したとはな……」

それは横島本人も知らない事である

横島がGSを辞めてしばらくした後、小竜姫がGS協会を尋ねて横島の話をわざわざ口にしたのだ


『横島は自分の弟子であり、再び戦場に戻すような事は自分は望まない』

小竜姫が話したのはそれだけである

実際横島と小竜姫が師弟関係なのかは微妙なとこだが、あえて小竜姫は弟子だと言っていた

神族が人界の問題に口を出す訳にはいかないが、弟子なら話は変わる

少なくとも横島に妙なちょっかいを出せば、小竜姫に伝わるという意味を持つ

人界に疎く神族としての制限がある小竜姫が、悩んだ末に横島の今後の為に最大限に動いた証であった


「理由はわかんないけど、後ろ盾になってるのね。 結局、いろいろややこしいから誰も忠夫には関わらないか」

資料を読み終えた百合子は複雑な表情で考え込む

横島の周りは予想以上に安全だが、美智恵だけは油断出来る状況ではない

結局百合子と大樹は美智恵から目を離す事は出来ないと結論付けていた



同じ頃、六道家では冥菜が仕事の合間にふと考え込んでいる


(百合子ちゃんはどう動くかしらね~)

情報を渡したはいいが、百合子の今後の行動が冥菜にはイマイチ読めなかった

今のところ美智恵だけだが、百合子の怒りの矛先が六道家やオカルト業界に向かないとは限らない

横島の問題の原因は令子や美智恵の扱いにあるが、それを許して来たオカルト業界の体質にも問題はあるのだ

冥菜としては怒りの矛先が六道家やオカルト業界に向く前に、関係改善をしようとしたのである


(それと、百合子ちゃんは気付いてるのかしら~? 横島君は神魔界での方が知名度が高いのよね。 横島君の場合はアシュタロスを倒した功績から死後に神族になる事も十分考えられるし、間違っても恨まれるような結果には出来ないのよね~)

いつもに増して慎重な冥菜の本心はここにあった

無論百合子との対決を回避したいのも理由だが、すでに横島の功績は神魔界で有名なのだ

将来的に神族化する事も十分ありえる横島の扱いは、どうしても慎重にならざるおえなかったのだ


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