ただ今修行中!?

「はい。 わかってます」

心に突き刺さるような鬼道の言葉に、おキヌは揺れる気持ちを落ち着かせるように静かに頭を下げた

今のままではGSになれないのは、おキヌ自身が一番理解している

令子の元でGSを一番間近で見てきたからこそ、誰よりも理解していた


(心の問題は難儀やからな……)

職員室を出ていくおキヌを見つめる鬼道は、問題の難しさに頭を悩ませていた

女子高生を相手に霊能の教育をする鬼道にとって、一番難しいのは心の問題である

特に鬼道は幼い頃より最低の父親に復讐の道具として育てられてきたため、当たり前の幸せや家族を知らない

年頃の女の子の悩みにどう答えて導けばいいのか、鬼道によくわからなかった


(才能があるのも楽やないんやな)

自身は霊能の才能に恵まれなかった鬼道は、おキヌの才能を羨ましく思うと同時に才能が無ければあそこまで悩む事もないだろうと思う


事実おキヌがどこまで知ってるのかわからないが、おキヌのネクロマンサーを期待する業界関係者は多い

令子の弟子であるため関係者がおキヌに接触する事は無いが、おキヌはGSになるのが当然だと考える関係者も多く活躍を期待する声も想像以上に多かった

おキヌの将来を縛るつもりがない令子が守っているため表沙汰にならないが、現状でもおキヌのネクロマンサーに対する依頼は令子の事務所やGS協会には国の内外から集まっている

鬼道はそんな周囲の見えない期待やプレッシャーも、おキヌを追い込む一因かと考えていた



一方職員室を後にしたおキヌは、鬼道の言葉を思い出しふと考え込んでいた


(私、なんでGSになろうとしてるんだろ)

GSの厳しさや難しさを理解するおキヌは、今の自分がGSになりたい理由を考えるが思い浮かばない


(私は美神さんや横島さんと同じ場所に立ちたくて……)

思えば必死だったとおキヌは思う

あの日大霊団に追い詰められていたおキヌが望んだのは、令子と横島を守る事だった


(二人を守れた事が……、そして同じ場所に立てた事が嬉しかった)

迷い苦しむ魂達を救えた事も嬉しかったおキヌだが、やはり令子や横島と同じ場所に立てた事が一番嬉しかったのだ

それがずっと苦しみ戦う二人を見てるしか出来なかった、おキヌの夢だったのである


(でも……、私の望んだ場所はもうない)

自分の夢が叶わぬ幻になってしまった今、おキヌは何故今もGSになろうとしてるのか自分でもわからなかった

無論令子と共に仕事をしたいとは思うが、それはかつての夢とは何か違う気がしている


「美神さん…… 横島さん……」

三百年ずっと山奥でただ時が過ぎるのを待ち、生き返って僅か数年のおキヌには令子と横島が全てだったのだ

そんな令子と横島の決別を未だに受け入れられないまま、おキヌは悩み続けるしかなかったのである


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