一人取り残されるような気持ちになり寂しさを隠せない愛子を、横島達は心配そうに見つめる


「人間社会で生きて行くのは難しいですからね。　特に愛子さんは人型の妖怪に比べて目立ちますし」

バンパイアハーフのピートは、この中で一番妖怪が人間社会で生きる難しさを知っている

力になってやりたいが、具体的な方法を考えるとなかなか難しい


「愛子の夢はなんだ？　やっぱり学校関係か？」

「よくわかんないかな…　学校の先生になりたい気もするけど、私は学校以外知らないから…」

夢を尋ねる横島に、愛子は寂しそうに笑顔を見せて答える

テレビを見たり学校周辺の商店街は行くことはあるが、実際人間社会はよく知らないのだ


そんな会話の後、横島達は一日中何かを考え込んでいた



そして同じ日、おキヌは数日休んでいた学校に登校していた

令子の進めで精神的に落ち着くまで数日学校を休んだおキヌだったが、春休み前には登校しようと考えこの日登校していたのだ


「おはようございます」

おキヌが笑顔でクラスメートに挨拶して自分の席に座ると、弓かおりと一文字魔理が浮かない表情でおキヌの元にやって来る


「おキヌちゃん、あの横島って人ＧＳ辞めたんだって！？　なんかやらかして首になったんだろ？」

おキヌの席に来るなり心配そうな表情の魔理は、事情を決め付けた様子で語っていた

魔理としてはおキヌを励まそうとしてかけた言葉だが、その言葉がおキヌの胸に突き刺さる


「いえ、横島さんも高校を卒業ですから…　別の仕事をするみたいです」

ズキンと痛む胸の内を隠すように笑顔を作るおキヌだが、かおりと魔理にはその笑顔が痛々しく見えてしまう


「本当ですの？　どうもあの男の情報はよくわかりません。　いい情報と悪い情報が極端なんですよね」

おキヌの表情を見て、かおりは何かあったと悟っていた

この期に及んで横島を庇う発言をするおキヌを不敏に思い、横島を許せない気持ちが高まっていく


「私は直接話してないので詳しくわかりませんが、横島さんは魔鈴さんのレストランで働くみたいです」

一生懸命に気持ちを押し殺して笑顔で話すおキヌが、二人は心配でたまらない


「話して無いってどういうこと？　同じ職場で働いてたんだろ！」

横島に対しての怒りが我慢が出来ないのか、魔理は荒っぽい口調になっていた


「一文字さん！　氷室さんを責めるのは間違ってますわ！」

励ますつもりがおキヌの困った様子を見て、かおりは魔理を睨みつける


「あの…　横島さんのことは何も言えません。　私も知らないことがたくさんありますし、弓さんと一文字さんは横島さんのこと誤解してますから」

申し訳なさそうに頭を下げるおキヌに、 かおりも魔理もそれ以上聞けなかった


しかし、何も知らない二人には横島が悪いようにしか見えない

そして二人は顔を見合わせて、おキヌの為に真実を暴こうと考える