ただ今修行中!?

数日後、学校が休みな土曜日を利用して愛子が勉強を教えに来ていた

当初教わるのは雪之丞一人のはずだったのだが、話を持ち掛けたピートと噂を聞き付けたタイガーも参加して賑やかな勉強会になりそうである


「わざわざありがとうございます。 私が教えるべきなんでしょうが、店の方もあるのでなかなか時間がとれなくて……」

「いえいえ、気にしないで下さい。 土日とか放課後は学校が無人になるから、一人で暇なんです」

突然講師を頼んだ愛子に申し訳なさそうに頭を下げる魔鈴だが、愛子は低姿勢な魔鈴に逆に戸惑ってしまう

元々暇を持て余していたし、何より人に勉強を教えるのを楽しみにして来ていたのだ

そんな愛子は、あまり堅苦しく頭を下げられると困ってしまうようである


「それで、何を教えればいんです?」

「簡単な基礎知識と、後は経理や事務系に必要な事をお願いします」

教える事を相談した愛子と魔鈴が決めたのは、社会人として必要最低限の知識と事務系の勉強から始める事だった

雪之丞もタイガーも基礎知識が無いのは元からだったが、事務系の仕事をするスキルも皆無だったのだ

GSは基本的に、協会に提出する書類や依頼主への見積もりや請求書など多岐に渡る書類を書かねばならない

しかし雪之丞達はそんな事がまるで出来ないのだ

魔鈴やエミが霊能関係を中心に教えてる事から、どうしても一般知識と事務系の勉強は進んで無かったのである


「それじゃ、始めるわよ!」

それから雪之丞達三人を前にした愛子は、教師になった気分でテンションが高いまま勉強を教え始めた


「じゃあ、簡単なテストから始めるわよ。 雪之丞君の実力も見ながら進めるためにね」

さすがに何十年も学校で生きてきただけあって、愛子は手慣れた様子で勉強を教え初める

学校に憧れ学校を愛してきた愛子だけに、誰よりも教師や生徒を見つめてきたのだ

その経験は素晴らしいものであり、中途半端な教師よりよっぽど教えるのが上手いようである


それから数時間後、愛子は雪之丞の実力を把握して教え始めるが、内容は本当に基礎から教え始める事になっていた


「GSって戦うだけだと思ってたら大変なのね~」

雪之丞達に勉強を教えつつ、愛子は霊能関係の本を見て驚いている

覚えるべき知識が半端で無く、全てを完全に覚えるとすれば司法試験より大変なほどなのだ


「ほとんどのGSは得意分野を専門的に扱うので、実際に全てを覚えてるGSは少ないみたいですよ」

「それでもイメージと違ったわ。 横島君やタイガー君がなろうとしてたんだから、肉体労働なイメージだったから」

実際には専門分野がありGSはそれぞれ専門分野しか覚えないと教えるが、それでも愛子のイメージとはまるで違ったらしい


「俺は妖怪が勉強好きな方が意外だったよ」

頭がよく勉強を教えるのが上手い愛子を、雪之丞は珍しそうに見つめていた

別に妖怪の全てが好戦的だとは思わないが、勤勉な妖怪が居るとはさすがに思わなかったらしい


「そうかしら? 学校に住み着く妖怪は勉強好きな妖怪も結構居るわよ。 特に私は九十九神だし」

雪之丞の言葉に愛子は苦笑いを浮かべる

愛子が知る学校の妖怪達は、ほとんどが好戦的ではない

特に愛子のような人間社会から生まれた九十九神は、その存在からして人間に好意的な妖怪なのだ


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