ただ今修行中!?

「そうなんだ~ よかったな」

大樹とは対照的に、横島はあまり興味が無い様子で反応が薄い

今更両親が帰国したからと言って、横島は生活を変えるつもりなど無いのだ


「この人もこれが無ければ、もっと早く出世したんだけどね」

馬鹿笑いする大樹に、百合子は少し困ったように笑みを浮かべる

百合子が認めて育てただけあって能力や人望もある大樹の弱点は、やはり性格にあった

子供っぽいと言うのか大人げないと言うのかわからないが、精神面にムラがあり抜けてることも多々ある

この性格のムラが無ければ、ナルニアになど行かなかっただろうと百合子は思う


「やっぱり横島に似てるわね」

「拙者もそう思うでござる」

大樹を見てつぶやくタマモとシロに、横島は嫌そうな顔をして二人を見る

それというのも、本人には似てるという自覚が全く無い

別に父親が嫌いな訳ではないが、小さな頃から何をしても勝てなかった父親の存在はどこかコンプレックスになっているのだ


「高校も卒業したし、別にあんたのやる事に口出ししないわよ」

横島の微妙な表情に百合子は口出ししないと言うが、横島としては何か気が休まらない気がしている


「ただ、そろそろあんたの税金対策はしなきゃダメなんだよ。 前の事務所であんた脱税の片棒担がされてたからね。 今年で調整しないと、あんた捕まるよ」

「えっ!?」

ついでとばかりに百合子が話した税金対策に、横島は驚いたように目を見開く


「やっぱり考えてなかったね。 あんた去年の年収一億五千万になってるんだよ。 税金いくらかかるかわかってるのかい? その他にもあっちの事務所の経費を使ったの半分はあんたになってるんだ。 いろいろ根回ししないと、美神令子を恨む連中に何されるかわかったもんじゃない」

事務所を辞めた事で全て解決したと思っていた横島に、百合子はため息をはいて説明していく

脱税や節税を駆使して出来るだけ税金を払わないようにしている令子だけに、利用出来る者は利用していたようである

まあ横島の名前を使っただけで横島に実害は全くなかったのだが、百合子としては許せる範囲ではない


「どうするんだ?」

「前年の分の税金は自分で払うしかないよ。 これ以上美神令子に関わってもいい事無いからね」

具体的方法を尋ねる横島に、百合子は自分で払えと言う

この決断の裏には、これ以上美神親子に関わる事のリスクが大きすぎる事がある

美神親子は六道家との繋がりが深く、その他に政財界や裏にも繋がりがある人は結構いるのだ

誰がどこまで関わってるか判断が難しく、せっかく縁が切れたのにまた争う事はあまりにも危険過ぎると判断していた

それに加えこの問題は、横島本人の為にもいい勉強になるのではと百合子は考えている


(お金の問題は怖いからね。 美神令子みたいなのも困るけど、忠夫みたいに疎いのも怖いとわかってくれればいいんだけどね)

自分で払えと言われて表情が引き攣る横島に、百合子はお金にしっかりして欲しいと願っていた

愛情や友情がお金で壊れる事などよくある事だし、家族ですらお金で目茶苦茶になる事は珍しくない

横島が令子の色香に騙されて働いていたのは知ってるが、だからこそしっかりした金銭感覚を持たせたいと百合子は考えているようだ
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