GS試験再び……

その後も酒を飲みながら、エミの話は続いていく

厳しい話が多いのは変わらないが、GSとして成功する秘訣やオカルト業界関係者との付き合い方など、本来なかなか教えないような裏側までさらりと教えていた

それは業界関係者との関わりが薄い魔鈴も勉強になるような話であり、本来他人に言うような内容では無かったと言う


(商売敵にこんな事教えるなんて、私もヤキがまわったワケ)

いつの間にか人に言わないような事まで教えてる現状に、エミはふと苦笑いを浮かべる

以前なら絶対しなかっただろう自分の行動には違和感を覚えるが、話をやめる事は無い


(才能あるこいつらが潰れるのは、もう見たくないワケ)

チラリと横島に視線を向けたエミは、雪之丞とタイガーが同じような事にならないように祈らずにはいられなかった

結局エミもまた、アシュタロス戦を境に何かが変わったようである


その後魔鈴とエミで今後の事を話し合い、これからも定期的に雪之丞とタイガーを互いの元に行き来させる事を決めて別れていた

魔鈴はGS事務所の詳しい現状を雪之丞に教えるためであり、エミは魔鈴の技術や横島達を含めた環境がタイガーにとって必要だと判断した為である


結果今回のGS試験は、雪之丞とタイガーにとって新しい人生の始まりだった

それは霊能者という意味もあるが、社会人になったという意味もある

彼らの苦労や修行は当分続くようであった



一方オカルトGメンの事務所では美智恵と西条が、夜遅くまでGS試験の受験者の書類を作成していた

今後人手が必要になった時に瞬時に人材を探せるように、集めた資料をデータ化するようである


「書類審査も思ったよりいい人材が集まったみたいね」

「ええ、特に霊視やヒーリングや精神感応など、特化型の霊能者は多く居ました」

二次試験の資料を纏めるのは比較的早く終わったのだが、書類審査の方は数の多さに手こずっていた

しかし美智恵が当初予想したよりも、かなり優秀な人材が集まったのは確かなようだ


「何人かピックアップして、オカルトGメンに誘ってみましょう。 一人では使え無くても、10人程度でチームにすれば使えるわ」

将来的な組織の構想を練っていく美智恵だが、その表情が一瞬だけ曇ってしまう


(やはり指揮官が足りないわね。 並の霊能者を使うべき指揮官は、最低でも一流半の実力が欲しいのに……)

特化型の霊能者や一般的な霊能者でチームを組ませるつもりなのだが、それを指揮出来る人が西条しかいない

本来の美智恵の構想では、ピートをオカルトGメンの指揮官として使いたかったのだ


「わかりました。 とりあえず、所属事務所が決まってない霊能者から選んでみます」

考えこむ美智恵を前に、西条は人選の作業に入っていく

本当は優秀な人材から選びたいのだが、GS協会所属のGS事務所からの引き抜きはGS協会との関係を考えると不可能なのだ


この日美智恵と西条の二人は、朝方まで仕事を続けていく事になる

新しいGS試験の制度を利用して組織の拡大と定着を計る美智恵だが、その前途は多難なようである


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