GS試験再び……

一方六道女学院の席では、おキヌが去りゆく横島達を視界の端で見つめていた


(結局、顔も見れなかったなぁ)

この二日間おキヌの頭にあったのは、横島と自分の事だけである

もしかしたら話が出来るかもしれないという希望と恐怖で、試合などほとんど覚えてない

いつの日か堂々と横島と会って本音で話をすると心に誓っていたおキヌだが、突然訪れた横島との再会のチャンスには何も出来なかった

心の準備が出来てないと言えば聞こえがいいが、結局現実を見る勇気すら無かったのだ


(横島さん……)

心のどこかで横島が昔のように声をかけてくれる事を密かに期待していたおキヌは、複雑な気持ちのままである

横島と魔鈴の関係を見なかった事を安堵したと同時に、結局動けなかった弱い自分が無性に嫌だった


(もっと強くなりたい)

せめて横島を正面から見る事が出来るくらいは強くなりたい

おキヌはそんな想いを抱えつつ会場を後にする



(私と雪之丞の関係はなんだったのでしょうか)

おキヌの隣を無言で歩くかおりは、予想以上に冷静だった

雪之丞の強さや知らなかった過去の事にはショックを受けていたが、どこかで冷めてる自分もいる

自分が雪之丞に感じている感情はなんなのか、そんな疑問さえ浮かんでいた


(住む世界が違うのかもしれませんね)

違い過ぎる価値観と開いて行くばかりの距離に、かおりはどこか納得している部分もある

卒業パーティーの時にあんな別れ方をした為にいろいろ思い悩んでいたが、元々合わない部分が多かったのだ

離れた場所から雪之丞を見ていると以前と同じく雪之丞に会いたい気持ちと、このまま離れても別にいいのではと言う気持ちの両方があることに気付く


(運命の相手じゃなかったと言う事でしょうか……)

雪之丞の気持ちが離れていくに従って、かおりの気持ちも離れていた

会わない期間は会いたい気持ちが募っていたが、いざ会ってみるとそうでもない


結局久しぶりの再会で、互いに歩み寄る事の無い二人の距離はますます開いてしまう結果となった

元々強い絆もがある訳でも無く、横島達のように心から愛していた訳でもない

しいて言うならこれから絆を作って行こうという時に冷めてしまったのだ


(もう個人的に会う事は無いのかもしれませんね)

このままでは二人の関係は自然消滅してしまう

そう思うと悲しみが込み上げて来るかおりだが、だからと言って今更雪之丞に連絡しようとは思わなかった



この日ささいなきっかけで、かおりと魔理の恋愛はまるで反対の道へと進んでしまう

ドクターストップの勘違いからタイガーとの関係を縮めた魔理と、雪之丞との開いた距離感を受け入れてしまうかおり

二人の違いは本当にささいなものであり、反対に進んだ結果は偶然の産物である


しかしその偶然が二人の道を分けた事に、気付いている人はいなかった


36/38ページ
スキ