GS試験再び……

トクン……トクン……

互いの心音と呼吸の息遣いを感じる中で、二人は無言のままで時間を共にしていた


魔鈴達が心配した西条の事は、横島の頭には全くと言っていいほど無い

あれが第三者や別人だったら違ったのかもしれないが、以前から横島を嫌っていた西条なだけにある程度予想していた感じである

魔鈴達は西条があそこまで無神経な事を言うと思って無かったが、誰よりも西条を信じてない横島だけはイヤミの一つや二つは覚悟していたようだ


結局横島と魔鈴は何の問題も無く、そのまま寄り添うようにして時間を過ごしていく

しばらくして散歩から帰宅したタマモとシロが、二人の穏やかな表情にホッとしたのは言うまでもない



そして次の日になり雪之丞とタイガーは、いよいよ二回戦を迎えていた

まずは雪之丞の二回戦だが、一回戦に比べると観客の反応は静かである

すでに過去や桁外れの実力が知られている為に注目は集めるが、表向きは様子見といった感じが強い

一回戦が予想外に紳士的な態度だっただけに、表立った批判をする者はいないようだ

まあ同業者の感心はどちらかといえば、雪之丞の実力に向いている

特に魔鈴の弟子になっている為に魔法技術を見たいと期待する者も多く、余計に雪之丞に注目が集まっていた


そんな注目の二回戦だが、雪之丞は基本的に一回戦と同じ戦い方である

ただ一回戦と違うところは、一撃で決めなかった事だった

時間をかけて攻撃をかわしたり受け流したりしながら、相手が疲労するのを待って勝負を決めている

格の違いを見せつけつつも相手や観客に恐怖を抱かせない事を目的にしたため、そんな消極的な戦い方になったようだ


次にタイガーの二回戦だが、こちらは試合開始早々に精神感応を使用して戦う

精神感応の幻で自分の姿を隠したタイガーは、相手が幻に慣れる前に勝負を決めて勝った

タイガーの場合は雪之丞と違い経験や余力がほとんど無い

そのため唯一の武器である精神感応に相手が慣れる前に、勝負を決める事をずっと特訓して来たのだ


結果雪之丞とタイガーの二人は、順当に二回戦を勝ち見事にGS免許を取得していた



「長かったな」

二回戦に勝ち一人で試合会場を見つめる雪之丞は、感慨深げにつぶやく

前回の試験から約二年……

まさかもう一度GS免許を取れるとは思わなかったようだった


一時は諦めていただけに、GS免許を取得出来た喜びは一塩のようである



「ワッシが勝った……」

同じく二回戦を勝ったタイガーは、あまりの出来事に呆然としていた

あれだけ遠く感じていたGS免許があっさりと手に入っただけに、信じられない気持ちでいっぱいなようだ

一回戦の苦戦が嘘のように特訓通りに戦えたタイガーは、これが夢かと疑うほどの喜びを感じていた



「勝ったわね」

そして客席では弟子であるタイガーの勝利に、エミは僅かだが安堵の表情を見せる

タイガーの場合は今後がより大変になるために喜んでばかりもいられないが、これをきっかけに少しでも自信と精神的強さを持ってくれる事を祈らずにはいられなかった


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