「そう言う事か」

横島と魔鈴とシロは、試合の様子からようやくタマモの言葉の意味を理解する


この数週間、精神面の成長と試験対策を目的に修行をしていたタイガーだが、その成果は一応出ていた

無論精神面の成長は皆無だったが、試験対策の方は一部で成果が出ているのだ


「タイガー殿は守る事だけは上達したでござるからな～」

ボソッとつぶやくシロは、修行でのタイガーを思い出す

不器用を絵に書いたようなタイガーが成長したのは、打たれ強さと守りだった

雪之丞は出来るだけかわしたり避けるように教えるのだが、動きが鈍いタイガーは固まって防御をする事しか成長しなかったのである

まるで亀が甲羅に引っ込むように固く防御する姿は、見た目が微妙な割には固い守りだった


「あの相手だと、タイガーを倒すだけのダメージを与えるのは無理なのよ。　防御力だけなら魔装術を使う前の雪之丞に匹敵するもの」

あまりに不器用なタイガーの試合に半分呆れ気味のタマモは語る

天性の打たれ強さに加えて霊力を用いた防御の初歩を覚えたタイガーは、防御だけは魔装術を使う前の雪之丞に匹敵するのだ

もちろん神魔クラスになれば通用しないが、ＧＳ見習いレベルの攻撃では防御の上から倒すだけのダメージを与えるのは簡単ではない


「タイガーさんの能力は距離が関係ありませんからね。　今のうちにテレパスを使えばいいのですが……」

いつまで攻撃しないタイガーに、魔鈴は苦笑いを浮かべる

タイガーの戦術はあくまでも精神感応がメインなのだ

能力さえ使えば、ＧＳ試験レベルならば圧倒的に有利になるはずだが……

相手のハッタリに騙されて攻撃が出来ないタイガーを、横島達はヤキモキしながら見守っていた



「タイガー！　いつまでも遊んでないで攻めろ！！」

そんな膠着状態を終わらせたのは、雪之丞の一言だった

あまりに情けない試合に、つい口を出してしまったようである


「フンガー！！」

ずっと修行をしていた雪之丞の声に、タイガーは条件反射でテレパスを使っていく


「なっ！？　ヒィィィーー！！！」


ばたん！


勝負は一瞬で決まっていた

タイガーの見せた幻に、蛮玄人は悲鳴を上げて気絶してしまったのだ

　
　
「勝者、タイガー寅吉！！」

審判の声にタイガーは、ポカーンとした表情で立ち尽くしている


「９０％はどうしたんですかいノー？」

あまりに呆気なく情けない相手にも関わらず、タイガーは今だにハッタリを信じていた

まさか条件反射で使った幻で気絶するなど、思っても見なかったようである


「全く……　最初からテレパス使えって散々言ったのに」

ようやく勝ったタイガーに、雪之丞は安堵の表情を浮かべていた

その気になれば瞬殺も可能だった相手に、どれだけ振り回されれば気が済むのかと思うとため息がしか出ない


一方会場ではタイガーの試合の評価が、真っ二つに分かれていた

タイガーが相手のハッタリを見抜けないほど未熟だと思う人と、わざと蛮玄人をからかって試合をしていたと思う人の二種類に分かれている


相手の攻撃をほぼ完璧に防御して、相手が疲れた時にテレパスで攻撃もせずに勝ったのだ

見方によっては、タイガーがわざと騙されているフリをしていたようにも見えていたのである