GS試験再び……

「大変なんですね」

「そうね。 オカルトGメンは、いつどんな霊症が起きても対応出来るようにしないとダメだから」

苦労を労うおキヌに、美智恵は少しだけ疲れた表情を見せていた

設立して以来ほとんど機能してないオカルトGメンを、なんとか支えていたのは西条と美智恵の個人の力である

アシュタロス戦後は組織の安定と定着の為に力を尽くして来た美智恵だが、現状ではあまり進んでない

身近な存在で一番裏表が無いおキヌが相手なだけに、美智恵は思わず素の表情が出ていた


「あら、後ろの二人は友達かしら? 私は美神美智恵です。 オカルトGメンの代表をしてるわ。 よろしく」

おキヌと少し世間話していた美智恵は、後ろで緊張気味の二人に気付き挨拶をする

その表情は先程とは一変して、優しく親しみやすい笑顔であった

まるで選挙前の政治家のように笑顔で握手を交わす姿は、流石と言うしかないだろう


「弓かおりといいます。 よろしくお願いします」

「一文字魔理です。 よろしく」

美智恵を見て考え事をしていた二人は、自分達にまで挨拶してきた事に驚き緊張したままである

普段テレビなどでは決して見せない美智恵の優しい笑顔に、かおりも魔理も驚きを隠せない

普段の自信に満ちたオーラや態度とは全く違う親しみやすい美智恵が、二人共信じられないようだった


(この辺りの変わり身の早さは、美神さんと同じだな~)

先程の表情とまるで違う美智恵に、おキヌは流石に令子の母親だと感心してしまう

美智恵と同じく令子もまたお得意様の依頼人には、日頃と全く違う態度になる事があるのだ

最も令子が態度が変わる依頼人は金額により限られているが、美智恵はおキヌの友達にまで態度が変わった

そんな美智恵におキヌは、美神家のしたたかさを改めて感じている


「卒業したらGSになるの? 良かったらオカルトGメンも考えてね。 将来の為のいい勉強になるわよ」

一方予想外に優しい態度にポカーンとした二人に、美智恵は名刺を渡しオカルトGメンの勧誘をしていた

その他にも困った事や相談事などなんかあったら気軽に連絡してくれと笑顔で語る美智恵の姿に、二人は頷くしか出来ないままである


そんなおキヌ達三人は美智恵と親しく話している事で、周りの注目を集めていた

業界関係者や同じ六道女学院の仲間達も、おキヌ達三人に熱い視線を向けている


「私達はそろそろ行きますね。 頑張ってください」

周囲の視線に気が付いたおキヌは、二人を連れて足早に六道女学院の席に向かう

あまり目立つのに慣れてないおキヌは、周囲の過剰な視線に耐えられなかったらしい


(即戦力には遠いけど、あんな子達なら育てながら使えればなんとかなるんだけどね……)

おキヌ達が去った後、美智恵は席に座り少し考えていた

笑顔で二人と会話しながらも、しっかりと実力を計っていたようである


(まあ無理でしょうね。 若い女性が働きたい職場じゃないし)

いつものように勧誘はしたが、美智恵自身もあまり期待はしてないようだ

興味があっても危険で給料が安くて忙しいオカルトGメンに来る人間など、全くと言っていいほど居ないのが当然なのである


そんな美智恵は一人静かに二次試験が始まるのを待っていた

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