ネギIN横島・異伝 麻帆良に現れた女王様
「美神さんが結婚……、西条っすか?」
横島は驚きと共に、可能性が一番ありそうな男を思い出していた。
正直、令子は結婚が向かないだろうなと思うのだ。無論、そんな本音を漏らすほど今の横島は迂闊ではないが。
横島の元世界の令子は結婚などする様子すらなく、目の前にいる令子が平和な世界の住人なんだと察すると少しだけ羨ましくなる。
「違うわよ。アンタが会ったことないやつよ」
横島の失礼な想像を察した令子はジトっとした目で少し睨むが、すぐに仕方ないと言わんばかりに流した。
一方の令子も自分の知らない横島に僅かに興味は抱いていた。
その立ち居振る舞いと気配から、自分が知る横島とはまったく違う存在だと察してもいるわけで……。
「そんじゃ、帰る前に一杯ご馳走しますよ。とっておきをね。ああ、ついでに飯でも食って帰ってください。オレとこの子たちで作ったものっすから」
「横島クンが料理ねぇ」
そのまま厨房に入ると、店内は奇妙な静けさになったが……、その時、美沙はひとりだけ動いていた。
「あの……結婚相手、マスターってか横島さんですよね?」
どうしても確認したいことがあり、嫌がられるのを覚悟で令子の下に来ていた。
自分の中の予想を確かめるのはこのタイミングしかないと思ったのだ。
「ちょっと美沙さん!?」
あやかは初対面の令子に謝るように止めるが、少女たちほほとんどは美沙の言葉に驚き騒然とした。
実は恋愛に疎いエヴァや刀子、夕映ですら気付いておらず、洞察力がある千鶴と木乃香が直観的にその可能性に気づいただけであった。
「フフフ……」
令子はそんな女性陣を見て笑った。かつての令子ならば面倒そうな顔をしたかもしれないが、彼女はもう三十になる。昔と比べるとだいぶ丸くなったらしい。
「そうよ。よく分かったわね。ただ、貴女たちの横島クンとは違うわ。私の彼は普通の人間だから」
あっさりと認めた令子は、少女たちとエヴァと刀子に少しだけ懐かしいものを感じていた。横島と出会い、まだまだ未熟で、馬鹿なことばかりしていた自分と横島の空気を、この場に感じたからかもしれない。
「一緒にいてまだ日が浅いですけど、私も本気ですから」
「苦労するわよ。貴女たち。横島クンと一緒にいると」
貴女『たち』という一言にも美沙は驚かない。自分たちと横島の微妙な関係をほぼ見抜かれたと察するが、ある意味、自分たちの先輩のような感覚をもって接している。
「まだ、覚悟出来ていると言い切れませんけどね。それでも離れる気はありませんから。誰も……」
若いと思う。まっすぐ見つめる美沙に、令子は少し羨ましくなる。
「それでいいんじゃない? 私とあいつよりずっとマシよ。私たちはなんとなく一緒にいただけだから」
面白そうだなと、令子の好奇心が少しうずく。
十年余り一緒にいて飽きることだけはなかった。横島とはそういう男だったから。
「ああ、横島クンには内緒ね。たぶん、知らないほうがいいから」
人の心まで見えそうな。そんな気配すら感じる横島だが、この件はたぶん、知らないほうがいい。令子は直感的に感じていた。
横島は驚きと共に、可能性が一番ありそうな男を思い出していた。
正直、令子は結婚が向かないだろうなと思うのだ。無論、そんな本音を漏らすほど今の横島は迂闊ではないが。
横島の元世界の令子は結婚などする様子すらなく、目の前にいる令子が平和な世界の住人なんだと察すると少しだけ羨ましくなる。
「違うわよ。アンタが会ったことないやつよ」
横島の失礼な想像を察した令子はジトっとした目で少し睨むが、すぐに仕方ないと言わんばかりに流した。
一方の令子も自分の知らない横島に僅かに興味は抱いていた。
その立ち居振る舞いと気配から、自分が知る横島とはまったく違う存在だと察してもいるわけで……。
「そんじゃ、帰る前に一杯ご馳走しますよ。とっておきをね。ああ、ついでに飯でも食って帰ってください。オレとこの子たちで作ったものっすから」
「横島クンが料理ねぇ」
そのまま厨房に入ると、店内は奇妙な静けさになったが……、その時、美沙はひとりだけ動いていた。
「あの……結婚相手、マスターってか横島さんですよね?」
どうしても確認したいことがあり、嫌がられるのを覚悟で令子の下に来ていた。
自分の中の予想を確かめるのはこのタイミングしかないと思ったのだ。
「ちょっと美沙さん!?」
あやかは初対面の令子に謝るように止めるが、少女たちほほとんどは美沙の言葉に驚き騒然とした。
実は恋愛に疎いエヴァや刀子、夕映ですら気付いておらず、洞察力がある千鶴と木乃香が直観的にその可能性に気づいただけであった。
「フフフ……」
令子はそんな女性陣を見て笑った。かつての令子ならば面倒そうな顔をしたかもしれないが、彼女はもう三十になる。昔と比べるとだいぶ丸くなったらしい。
「そうよ。よく分かったわね。ただ、貴女たちの横島クンとは違うわ。私の彼は普通の人間だから」
あっさりと認めた令子は、少女たちとエヴァと刀子に少しだけ懐かしいものを感じていた。横島と出会い、まだまだ未熟で、馬鹿なことばかりしていた自分と横島の空気を、この場に感じたからかもしれない。
「一緒にいてまだ日が浅いですけど、私も本気ですから」
「苦労するわよ。貴女たち。横島クンと一緒にいると」
貴女『たち』という一言にも美沙は驚かない。自分たちと横島の微妙な関係をほぼ見抜かれたと察するが、ある意味、自分たちの先輩のような感覚をもって接している。
「まだ、覚悟出来ていると言い切れませんけどね。それでも離れる気はありませんから。誰も……」
若いと思う。まっすぐ見つめる美沙に、令子は少し羨ましくなる。
「それでいいんじゃない? 私とあいつよりずっとマシよ。私たちはなんとなく一緒にいただけだから」
面白そうだなと、令子の好奇心が少しうずく。
十年余り一緒にいて飽きることだけはなかった。横島とはそういう男だったから。
「ああ、横島クンには内緒ね。たぶん、知らないほうがいいから」
人の心まで見えそうな。そんな気配すら感じる横島だが、この件はたぶん、知らないほうがいい。令子は直感的に感じていた。
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