IF・弓かおり
森の中は冷たい空気で満ちていた。
横島はゆっくりとおキヌとの関係や美神事務所でのアルバイトのことを語る。
途中で憧れていた美神令子の実情にかおりはめまいがしそうなほどだったが。
「へっくしゅん!」
ただ寒空の下で上着をかおりに貸した横島は体が冷えてしまったようで、寒さからくしゃみをしてしまう。
「大丈夫ですか? もう、格好付けるから……」
そんな横島の姿にかおりはクスッと笑うと借りていた上着を脱ぎ横島に帰そうとするが、横島もプライドがある。大丈夫だからと押し問答をする。
結局上着を二人で掛けるようにすることで互いに妥協した横島とかおりは、冷たくなりつつある手を握り温め合う。
「あれ、これは……」
そんな時、上着のポケットから細長いラッピングされたプレゼントがこぼれ落ちた。
「ああ、いや、クリスマスなんで……」
さすがにプレゼントはかおりのためだということが言わなくてもわかる。ちょっと照れくさそうな横島にかおりは笑みを受けべていた。
「開けてもいいですか?」
「ええ、どうぞ。たしたもんじゃないっすよ」
中身はペンダントだった。横島のひと月分のバイト代が吹っ飛ぶくらいの値段である。ちなみにこのプレゼントを買うために涙ぐましい努力を続けていたのは、秘密だった。
「……ありがとうございます。どうです? 似合いますか?」
きらきらと控えめに光るペンダントにかおりは胸の奥が熱くなり、そのまま身に付けて見せた。
「ええ、とっても」
あまり要領が良くなく、馬鹿であけすけだけど、一緒にいると楽しくて笑っていられる。そんな横島と一緒の時間がかおりは好きだった。
学校では優等生の仮面で、家でさえ厳しい修行の日々で気を抜けないかおりにとって唯一の憩いの時間だった。
一度冷えた体はなかなか温まらないのか、顔色が悪く唇に至っては紫色になっていた。
その様子にかおりは何故か嬉しそうなオキヌの顔と、気を許していたような素の表情だった横島の顔が浮かぶ。
「横島さん」
取られたくないと思った。
わがままで不器用な自分のすべてを笑って受け止めてくれる人を。
「弓……さん?」
かおりは横島の顔に手を当てて両手で頬を撫でるようにすると、横島の目をしっかり見て目を閉じた。
流石にここまで来れば、いかに横島でもわかる。
ドクンドクンと高鳴る鼓動に自分でも驚きながらも、自然と欲望より愛しさが勝っていた。
優しくかおりに触れると、横島はゆっくりとルージュが光るかおりの唇を奪った。
「よっ、横島さん!?」
「てめえら。人が心配して探してみれば……」
「弓……あんた……」
この世の春と言わんばかりに長い口付けを邪魔したのは、魔鈴の店と繋がり心配していたおキヌと、ぼろぼろになっていた雪之丞と魔理の三名だった。
信じられないと言わんばかりのおキヌと魔理はともかく、雪之丞はどちらかといえば探していた二人が隠れてイチャついていたので怒っている感じか。
「いや、これはだな!?」
「うふふ。お恥ずかしいところをお見せ致しましたわね」
横島とかおりの反応は対称的だった。おろおろと挙動不審になる横島と、何処か開き直ったようなかおりの姿はあまりにも違い過ぎた。
ちなみにおキヌは本当に二人の関係が親密だとは思わなかったらしい。いわゆる令子と横島の関係に近いのかと想像はしたが、まさか男女の関係だとは思いもしなかったのが本音だろう。
横島はモテないとある意味、高を括っていたのだ。
「横島さん!」
「てめえ、自分だけいい思いをしやがって!!」
混乱して取り乱すおキヌと怒りのままに横島に詰め寄る雪之丞を見つつ、かおりはそっと自身の唇を指でなぞり、横島を見つめていた。
横島も横島でそんなかおりをしっかりと見ていて……。
「前言撤回致しますわ。私は本気です。誰にも渡しませんわ」
かおりは明らかに横島に好意がある様子のおキヌに高らかと宣戦布告をした。
ちなみににんにくの後遺症に苦しむピートと、影が薄くて放置されていたタイガーのことは誰も見ていかなった。
横島はゆっくりとおキヌとの関係や美神事務所でのアルバイトのことを語る。
途中で憧れていた美神令子の実情にかおりはめまいがしそうなほどだったが。
「へっくしゅん!」
ただ寒空の下で上着をかおりに貸した横島は体が冷えてしまったようで、寒さからくしゃみをしてしまう。
「大丈夫ですか? もう、格好付けるから……」
そんな横島の姿にかおりはクスッと笑うと借りていた上着を脱ぎ横島に帰そうとするが、横島もプライドがある。大丈夫だからと押し問答をする。
結局上着を二人で掛けるようにすることで互いに妥協した横島とかおりは、冷たくなりつつある手を握り温め合う。
「あれ、これは……」
そんな時、上着のポケットから細長いラッピングされたプレゼントがこぼれ落ちた。
「ああ、いや、クリスマスなんで……」
さすがにプレゼントはかおりのためだということが言わなくてもわかる。ちょっと照れくさそうな横島にかおりは笑みを受けべていた。
「開けてもいいですか?」
「ええ、どうぞ。たしたもんじゃないっすよ」
中身はペンダントだった。横島のひと月分のバイト代が吹っ飛ぶくらいの値段である。ちなみにこのプレゼントを買うために涙ぐましい努力を続けていたのは、秘密だった。
「……ありがとうございます。どうです? 似合いますか?」
きらきらと控えめに光るペンダントにかおりは胸の奥が熱くなり、そのまま身に付けて見せた。
「ええ、とっても」
あまり要領が良くなく、馬鹿であけすけだけど、一緒にいると楽しくて笑っていられる。そんな横島と一緒の時間がかおりは好きだった。
学校では優等生の仮面で、家でさえ厳しい修行の日々で気を抜けないかおりにとって唯一の憩いの時間だった。
一度冷えた体はなかなか温まらないのか、顔色が悪く唇に至っては紫色になっていた。
その様子にかおりは何故か嬉しそうなオキヌの顔と、気を許していたような素の表情だった横島の顔が浮かぶ。
「横島さん」
取られたくないと思った。
わがままで不器用な自分のすべてを笑って受け止めてくれる人を。
「弓……さん?」
かおりは横島の顔に手を当てて両手で頬を撫でるようにすると、横島の目をしっかり見て目を閉じた。
流石にここまで来れば、いかに横島でもわかる。
ドクンドクンと高鳴る鼓動に自分でも驚きながらも、自然と欲望より愛しさが勝っていた。
優しくかおりに触れると、横島はゆっくりとルージュが光るかおりの唇を奪った。
「よっ、横島さん!?」
「てめえら。人が心配して探してみれば……」
「弓……あんた……」
この世の春と言わんばかりに長い口付けを邪魔したのは、魔鈴の店と繋がり心配していたおキヌと、ぼろぼろになっていた雪之丞と魔理の三名だった。
信じられないと言わんばかりのおキヌと魔理はともかく、雪之丞はどちらかといえば探していた二人が隠れてイチャついていたので怒っている感じか。
「いや、これはだな!?」
「うふふ。お恥ずかしいところをお見せ致しましたわね」
横島とかおりの反応は対称的だった。おろおろと挙動不審になる横島と、何処か開き直ったようなかおりの姿はあまりにも違い過ぎた。
ちなみにおキヌは本当に二人の関係が親密だとは思わなかったらしい。いわゆる令子と横島の関係に近いのかと想像はしたが、まさか男女の関係だとは思いもしなかったのが本音だろう。
横島はモテないとある意味、高を括っていたのだ。
「横島さん!」
「てめえ、自分だけいい思いをしやがって!!」
混乱して取り乱すおキヌと怒りのままに横島に詰め寄る雪之丞を見つつ、かおりはそっと自身の唇を指でなぞり、横島を見つめていた。
横島も横島でそんなかおりをしっかりと見ていて……。
「前言撤回致しますわ。私は本気です。誰にも渡しませんわ」
かおりは明らかに横島に好意がある様子のおキヌに高らかと宣戦布告をした。
ちなみににんにくの後遺症に苦しむピートと、影が薄くて放置されていたタイガーのことは誰も見ていかなった。
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