番外編・ネギまIN横島~R~(仮)

《とある昼時の小話》


この日私は大学部にある食堂棟の一角で、昨年の夏ごろからここの食堂棟の一つの店で売られている麻帆良カレーを食べていた。

元は中等部の子達が昨年の麻帆良祭で売ったメニューらしいがあいにくと私が知ったのは秋口に差し掛かる頃だった。

カレーというにはまろやか過ぎるスープ状の麻帆良カレーでだけど、食堂棟の麻帆良カレーは日替わりで具が違うので意外に食べ飽きないと人気だ。

正直私はカレーが嫌いではないが好きではないという友人に言わせると珍しい女だが、この麻帆良カレーは逆に好きで週の半分は昼食で食べている。


「ねえねえ、聞いた? マホラカフェのマスター新人研修に出てるらしいわよ。」

そんな私が麻帆良カレーを食べ終えようとしていた時、私の後ろに座った誰かが少し気になることを口にしていた。

その人達は私も加わっている魔法協会の人なのだろう。

認識阻害の魔法を使って堂々と噂話を始めたが、彼女達は同じ魔法使いには認識阻害の魔法はほとんど意味がないと知らないらしく私には丸聞こえだ。


「へ~、じゃあ堂々とアタックしてもオッケーってこと?」

「そうなんじゃないの? でもあの人って中等部の葛葉先生とか中学生の子達といつも一緒だよね。」

「バツイチと子供には負けないわ。」

噂の人物はこの麻帆良カレーの開発者らしく昨年から徐々に噂に上がるようになった人だ。

どうも後ろの彼女達は彼を狙ってるらしい。


「学園長やら雪広家の子供もいるのに大丈夫なの?」

「別に大丈夫でしょ。 婚約者とかじゃないなら。 顔・実力・お金が揃った男なんてなかなかいないもの。 子持ちなのはマイナスだけど実の子じゃないならどうとでも出来るでしょ。」

認識阻害の魔法は他人に聞かれないと思っているのか言いたい放題の後ろに私は少し呆れつつも、一部理解出来てしまう自分も居る。

愛や恋を否定する気はないが、優良物件が人気が集中し早々に売り切れるのは男女間でも変わらない。

お金で幸せが買えるなんて傲慢なことまでは言わないが、お金に苦労しなくなるだけで人生が楽になるのは確かなのだから。

どんな苦境でも愛や恋を死ぬまで貫けるような運命の相手なんて見つかるのはごく一部だ。

それよりは実力やお金がある相手を探した方が可能性は高い。

まして魔法使いは魔法が使えてなんぼなのだから。


「まあ見てなさい。 ああいうタイプは案外コロッと落ちるから。」

まるでナンパをする男のような会話をする女達だが、女の本性も一皮むけるとこんなものなのだろう。

貧しい家庭に生まれた私には後ろの言いたい放題している女に共感する気持ちも多分にある。


でも後ろの彼女達は気付いてないようだ。

あの人は今までも周りから愛されて来た人なんだと。

きっと地位や名誉やお金よりも愛を選んでしまう、私の両親のような人なんだと知らないらしい。

葛葉先生はよく知らないが周りの子達もそんな彼の価値は気付いている。

少なくとも上部だけであの人を見ている後ろの彼女には負けないだろう。

まあ来月には普通だけど優しい彼と学生結婚する私には関係のない話だ。



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