アリアハンへ

「お父さんとお母さんは盗賊に殺されました……。 私はこの人に助けてもらって無事ですが」

シャオは少しつらそうな表情に変わり話をする

その手は悔しさと寂しさを隠すように拳を握りしめている


「……そうかい。 いい人だったのにね…。 最近はこの辺りに盗賊が増えたからね…。 お城の兵士やギルド冒険者が居ない弱い人を狙うんだよ」

おばさんはため息をついて話している

どうやらこの村の近辺でもかなり被害があるようだ


「おばさん、とりあえずモンスターを買い取ってくれませんか?」

シャオが頼むとおばさんは、袋から倒したモンスターを出して確認し始める


「おや、随分状態がいいね。 下手に燃やされたり斬られたら安くなるんだけど、これならいい値をつけられるよ」

おばさんはそう話して計算を始める


「全部で100ゴールドでどうだい?」

おばさんはシャオと横島を見て値段を言った


「いんですか? 相場より高いですが…」

シャオは申し訳なさそうに聞く


「ああ、かわまないよ。 シャオちゃんのお父さんには随分儲けさせてもらったからね」

「ありがとうございます」

おばさんはシャオちゃんを気遣うように笑っていて、シャオは嬉しそうにお礼を言う


「シャオちゃん、頑張るんだよ!」

おばさんはシャオにお金を渡して励ましの言葉をかける


「はい、頑張ります!」

シャオは笑顔で頭を下げる

つらい時だからこそ、人の優しさが嬉しい


モンスターの換金を終えた横島とシャオは宿屋に向かう

宿屋に着くと、馬達を休ませて自分達も中に入る


「いらっしゃいませ。 お二人様で一晩4ゴールドになります」

宿屋の主人に案内されて、横島とシャオは部屋に入る


「なかなかいい宿屋だな~」

横島はこの世界の宿屋は知らないが、8畳ほどの部屋にベッドが2つ、掃除が行き届いており非常に過ごしやすい部屋であった


「お食事とお風呂はいつでも大丈夫です。 あまり遅くならない時間にお願いします」

主人は丁寧に説明して部屋を去った


「シャオ、疲れたろ? 先に風呂に入るか」

横島は夕食の前に風呂に入ることにしたらしい
 
 
「えっ……!? よ… よこしまさん…… まだ気持ちの準備が……」

シャオは顔を真っ赤にして横島をチラチラ見る


「………シャオ? 何か勘違いしてないか?」

横島はシャオの様子に不思議そうに考えて、ようやく理解する


「勘違い…? 夜の相手をするんじゃないの?」

シャオはどうやら大きな勘違いをしてるらしい


「ブッ!! どこでそんなこと覚えたんだ!? 俺は子供に手を出すほどロリコンじゃねぇ!」

横島は珍しく取り乱している


シャオは横島の言葉にホッペを膨らませる

ロリコンと言う言葉は理解出来なかったが、子供扱いされたのは理解していた

「私、子供じゃないもん…… 早い人だと私の年で結婚する人もいるもん…」

シャオは不満そうに横島を見つめる


だが、シャオの話は微妙に大げさだった

この世界、田舎では結婚が早いのもよくあるが、さすがに12才くらいだ


文明レベルが横島の世界で言えば、せいぜい中世である

学校はあるにはあるが、大きな城下町などにしか無く、田舎の村などは無い

法律などもきちんと整備されておらず、大人と子供の境は曖昧なのだ


早い話、働き手として役に立てば大人

従って、12才くらいで結婚してしまう人もいる


なお、倫理感などもまるで違う

結婚はあるが、教会で精霊ルビスに誓い式をあげるだけで結婚届けも、もちろんない

結婚観や貞操観も地域それぞれで、一夫多妻な地域もあれば、一夫一妻の地域もある

地域や村レベルで決まりやモラルはあるが、浮気と言う言葉は無い


交通がほとんど整って無いこの世界

旅をするのは冒険者と商人だけ

それゆえ、地域が変わると全く違う文化や風習があるのだ


シャオにとって子供とは、全く働けない赤ちゃんや幼児を指す

シャオはすでに両親の手伝いをしていた為、大人だと言う意識が強いのだ


2/5ページ
スキ