動き出す日常

横島が部屋から消えた直後

アリスが突然目を覚ます


「なんだろう… 嫌な予感がする」

アリスは妙な胸騒ぎを感じてベッドから起き上がり

何かに導かれるように部屋を出る


コンコン…


アリスが向かったのは横島の部屋だった

時間は深夜

起きてるはずはないのだが、アリスは嫌な予感が消えずに静かにドアを開ける


「居ない…」

アリスは空のベッドを見て、不安そうに外を見つめる


自分でも何が何だかわからない

ただ、自分の予感は良く当たる

アリスは横島が無事に帰ってくるように祈って待つ



それから数十分後


横島が転移して部屋に戻って来た

「うわっ!?」

横島は無人のはずの部屋にアリスが居て驚いてしまう


「どうした? こんな夜中に?」

横島は何故か部屋にいるアリスに、不思議そうに問いかける

「おかえり…」

アリスは横島の無事な顔を見てホッとしたように微笑む


「嫌な予感がしたの… それで何故か横島さんに会わなきゃダメだと感じたの…」

アリスは少し不安そうに、自分でも良くわからない予感を説明する


(力が目覚め初めているな…)

横島はアリスの話を静かに聞きながら考えていた

この2年で、アリスの不思議な力は少しずつ強くなっている

そして少し前、アリスとシャオが12才になった時、2人は精霊ルビスの洗礼を受けていた

その後は、明らかに力が目覚め初めているのだ


(運命か…)

横島は、不安そうなアリスを見て少し悩む


アリスの不思議な力の質や意味は、良く理解している


だが…

(まだ、早い… あと数年は時間が欲しい)

アリスの体や精神は今が成長期だ

力を目覚めさせて、闇との戦いをするには若すぎる


横島は迫り来る闇から、アリスの力を隠さねばと心に決める

「何も心配することは無いよ。 俺を信じてくれ」

横島は優しく強い微笑みでアリスを見つめる


「うん…」

横島の言葉と表情に、アリスの顔から不安が消えてゆく


「さあ、まだ夜中だ。 朝まで寝なよ」

横島はアリスを部屋に送って寝かしつけた


そして部屋に戻った横島は、ベッドに入って1人考える

(そろそろアリスのあの力を隠さないとダメだな… あれ以上力が目覚めたら、魔族に感知されるかもしれん)

横島は今日の出来事で、遠くない未来に闇が訪れることを感じていた

そして、アリスの未来を心配しながら眠りにつく



それと同じ時期

世界各地で、有名な冒険者達やその家族が襲われる謎の事件が起きていく

中には怪我や命を落とす者も居たが、大半は撃退に成功する

元々、盗賊狩りやモンスター退治で狙われることの多い冒険者達は、すんなり負けることは無かった


そしてこの手の事件は良くある話な為

それほど調べられることは無く、時と共に忘れ去られることになる


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