ファーストコンタクト

横島はシャオを静かに見つめていた


「シャオ、両親と話がしたいか?」

横島は静かに聞いた

シャオは驚いて横島を見たが、横島の真剣な表情に疑問を問うこともせず頷く


シャオが頷いたので横島は右手に文珠を出した

込めた文字は【現】【見】


横島には、両親の魂がまだこの場に居るのが見えていた

娘が心配なのだろう…

このままでは、悪霊になる可能性もある


横島は文珠を両親の遺体の周りに飛ばして、遺体を包むように魔法陣が浮かび上がった

「かの者の魂達よ! 今目の前に現れいでよ…」

横島が霊力を込めた言葉を言うと、魔法陣が光輝き…

両親の霊がシャオにも見えるようになった


「お父さん! お母さん!」

シャオは驚いて両親に飛び込む


「シャオ…」

両親は愛おしそうにシャオを抱きしめている


「シャオ、あなたが無事で良かった… 私達はそれで満足よ」

母親は嬉しそうにシャオに語る

母親はまだ若いようで、シャオを大人にしたような美人だ


「これからは私達は一緒に暮らしてやれない。 でもお前は強く生きるんだ。 私達の魂は常にお前と共にある」

父親は辛そうな表情を隠しながら、シャオに優しく言い聞かせようとしている


「お父さん! お母さん! 嫌だよ… 一人は嫌だよ…」

シャオは両親に抱かれながら泣き続けている


「シャオ… わがままを言ってはダメよ? 本当はこうやって話すことも出来ないのだから… 出会いと別れは必ず来るわ。 あなたが精一杯生きたら、また会えるわ」

母親は笑顔を作って優しくシャオに語りかける

しかし、母親も寂しさを隠しながら必死に言葉を出しているのを、横島には見えていた


そんなシャオと両親の別れを、横島は昔を思い出しながら見つめている

横島も幾多の別れを繰り返して此処にいるのだから…


(ルシオラ… みんな… 少し寄り道してもいいかな…)


横島は一人残されるシャオを放っておけない気持ちになっていた


「お父さん… お母さん…」

もはやシャオは泣きすぎて言葉が出てこない


両親はシャオをなだめながら横島に目を向ける

「どなたか存じませんが… シャオをお願いします」

父親が横島に語りかけると、両親が頭を下げる


よほどシャオが心配なのだろう

両親は自分達の無力を嘆き拳を握りしめていた


「わかった。 俺に任せておけ」

横島は死に逝く者の想いを、しっかりとした瞳で受け取っている


「シャオ… お別れだ。 最後に会えて本当に良かった。 幸せになるんだよ」

「シャオ…… 私達はあなたの両親で幸せだったわ。 あなたが天寿を全うしたらまた会いましょう」

父と母が最後の言葉をシャオに語りかけた


「うぇ~ん……」

シャオは泣いて言葉が出ない


「シャオ、最後は笑顔で見送ってあげるんだ。 両親が安心して天国に行けるように」

横島の言葉にシャオは必死に涙を止めようとする


「ぐす……ぐす…… お父さん…、お母さん…、わたし…幸せになるよ。 いつかまた会おうね」

シャオは長い時間をかけてやっと言葉を口にした


「私達はいつまでもお前を見守っている」

「さよならは言わないわ。 またね。 私達のシャオ」

両親は最高の笑顔を作りシャオと別れ、シャオも目を真っ赤にしながらも、笑顔を作って見送った


両親の霊が消えて、部屋の中は沈黙に包まれる

「さあ、両親に墓を作ってやろう」

横島とシャオは言葉少なく両親の墓を作っていく


数時間後…

シャオの家の隣に両親の墓が完成する

墓は近くにあった岩を横島が墓石に加工して作っていた


「安らかに眠れ…」

横島は両親が成仏出来るようにその場を浄化して、言霊で送った

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