初仕事

その日1日

横島とオルテガは休憩を挟みながら、険しい山を軽々進んで行く

あまりの険しい山に人は誰も近寄らない山な為、それは深い森や断崖絶壁の崖ばかり

途中からは獣道でさえ無い山を2人は地図を確認しながら進んでいく

生き物の気配の無い山は本当に不気味で

時折吹く風の音以外は沈黙の山々である


「横島殿、今日はこの辺りで休もう。 山の日暮れは早い。 日が暮れる前に食事をとった方いいからな」

オルテガは小さな洞窟を見つけると、野宿の準備をする

辺りはまだ夕方の前だが、これ以上進むのは危険と判断していた

普通の森や山なら野宿は、結界を張り火を絶やさずに一晩休むのだが…

この静か過ぎる山では火は目立ち過ぎる

それに弱いモンスターは火に近寄らないが、強いモンスターやドラゴンは火を恐れない

その為、逆に野宿の火が目立ってしまう

オルテガくらいの上級冒険者になれば、日が暮れるまえに火を使う食事などを終えて野宿に入るのが常識であった

オルテガが見つけた洞窟は断崖絶壁の麓にあり、目の前には森が広がる非常に目立たない場所である

「オルテガさん、俺は付近を少し見て来ます」

横島はオルテガに一言かけて、崖の上に飛んでいき、心眼の遠視でドラゴンを探し始める


(あれだな…)

ドラゴンは横島達より東に30キロほど先に発見する


(ドラゴンが3匹だけだな… しかしあのドラゴンは飛べそうに見えないが、どうやって来たんだ?)

横島は風に吹かれながら、静かに考えている

あまりに不自然にドラゴンは山の中にある森で眠っている


横島は疑問は解消しないが、目標を確認したので心眼を消して、オルテガの元に戻った


「横島殿、夕食を食べて早めに休もう」

横島とオルテガは簡単なスープとパンで夕食をとり、夕方には眠る準備を終えていた


横島とオルテガの居る洞窟には夕日が差し込み、目の前の森もオレンジに染まっている

横島は無言でそんな景色を眺めていた


オルテガはそんな横島の姿を見て、言葉ではいい表せないモノを感じる

(本当に不思議な青年だな… 実力も底が見えない。 それに人を惹きつける何かを持っている)

オルテガは心で呟き少し考え込む


その日2人はあまり言葉を交わすことも無く、日暮れと共に眠りにつく


しかし…

横島は目を閉じて起きていた

(誰だ?)

横島はかなり距離がある場所から見られているのを感じていた

日暮れの頃から、何者かが横島とオルテガをずっと監視しているようである


(さて、狙いは俺か…? 多分オルテガさんだろうな)

横島の実力をこの世界で知るのは、オルテガ、アリス、シャオくらいである

それを考えれば、相手の目的がオルテガだと推測していた


(あの魂は、魔族か?)

横島はあえて気付かぬ振りをして、相手を放置する

敵か味方かも判らないし、目的がはっきりするまで動く気は無い

幸い、監視だけなので問題は無かった



そして次の朝…

結局横島は一晩中起きて朝を迎えている

魔族らしき監視がずっと続いていたのだ


「おはよう、横島殿」

「おはようございます」

横島は魔族に気がついてないオルテガには黙って、普通通りに行動を始めた


さすがのオルテガもかなり距離の離れた場所にいる、魔族を感じるのは無理なようである

まあ相手も監視はしているが、詳しく見てはいない

横島とオルテガの行動を待っているくらいなのだから仕方ないだろう


2/9ページ
スキ