次の日から横島は、シャオとアリスのことを考えて、図書館を午前中だけに減らしていた

午後はとりあえず外に出ることを目的として、運動や遊びなど幅広く行動していく

元々横島自身は子供の頃は遊んでばっかりだった

すでに人間で無くなり、子供の頃の記憶は遥か彼方だが、本質的には横島の性格は残ってる

横島自身、昔を懐かしみながら２人と遊んでいた


シャオの将来はまだわからないが、闇と戦う運命にあるアリスの将来に、この遊びの記憶がきっと役に立つと横島は確信している

子供の頃の遊びの経験や記憶は全ての基礎になる

生きる力から戦う時の柔軟な発想など、どれも必要不可欠なものだ

横島は遥か先の未来を考えて２人に接している


横島自身はあれから基礎的な魔法をかなり契約していた

補助呪文や防御呪文など、冒険者用の呪文が多いが、中には結界や生活で使う呪文もかなり契約している

実用性は不明な呪文も多いが、横島の持つ複数の知識や経験と合わせればかなり応用が広がる為、契約だけは済ませていく

他にはアリアハン地方の地図や村や街の状況など、地理関係や風習など一般常識も少しずつ情報を集めていた


そんな日常を過ごして、オルテガの家に居候してひと月が経過した頃

横島はオルテガに一つの相談を受ける


「横島殿、良ければ手を貸して欲しいのだが…」

オルテガは冒険者ギルドに顔を出しに来た横島、アリス、シャオに話しかける


「何かありましたか？」

横島自身、オルテガの実力を高く評価している

戦闘以外にも組織の管理や運営能力も高く、よほどでなければオルテガが困る事態は無いと考えていた


「アリアハンの東には険しい山々が連なる。　その山に最近ドラゴンが現れるらしいのだ。　ドラゴン自体は山奥な為問題無いのだが、おかげで山に居たモンスターが麓まで降りてきて、周辺の旅人や村を襲っている」

オルテガは地図を見せながら横島に説明していく


「それで俺に退治して欲しいと…？」

横島は事態を理解してオルテガに確認する


「うむ、ドラゴンはめったに人が住む地域にはおらんのでな、戦った経験のある者が居ないのだ。　加えて、今は西の港町に続く街道の盗賊狩りで上級冒険者は不足気味でな…　今ドラゴン退治に向かえる人材は私１人なのだ」

オルテガは困ったように話している


「いいですよ。　俺が行ってきます」

横島は軽く引き受ける

この世界のドラゴンのレベルを知れば、他のモンスターなどに対しても参考になる

横島にとっても悪い話では無かった


「それでパーティーだが、私と横島殿の他に何人必要だい？」

オルテガは横島が引き受けて、ホッとしたようにため息をつき詳しい話に入る

横島が断れば、オルテガが他に数人を連れて行こうと考えていたが、実力的に不安だったのだ


「ドラゴンの強さは知りませんが、中途半端な力の人を連れて行くなら、２人で構いませんよ」

「そう言うと思ったよ。　私もその方が助かる。　この仕事は難易度Ａだから、やりたがる者は多いが、相手を考えれば少数精鋭が望ましい」

オルテガは横島の言葉に頷くと、自分の考えを話し出す


だが…

話を聞いていたシャオとアリスは少し不満そうである


「何日かかるの？」

アリスは面白くなさそうにオルテガに聞く


「付近の村までルーラで行くからな…　３日～４日くらいだろうか」

オルテガは不満そうな娘に少し困ったように話している