一方、部屋の中ではオルテガが冒険者ギルドの説明を始めている


「冒険者ギルドは世界中の都市にある。　我々は情報の共有と協力をして、世界の人々の交流と安定の為に行動をしている。　実際にする仕事は、モンスターや盗賊の退治、一般人の護衛。　後は未開の地の調査などだ」

オルテガは横島に資料を見せながら説明している


資料によれば、モンスターや盗賊は退治するとギルドから報酬が払われる


冒険者ギルドにはランクがあり、仕事を成功するとランクが上がる

ランクは一般的にＦ～Ａで、オルテガのように特別な人間はＳランクである


ランクは実力と信頼度から判定されており、実力があっても信頼度を上げなければランクは上がらない


Ｆランクは登録したばかりの人間で、ＦとＥランクはモンスターや盗賊退治しか出来ない

Ｄランク以上になれば、護衛などの一般人からの依頼を受けられる


他にも、モンスターや盗賊の強さ

それに依頼人の指名などで、受けられる依頼は変わってくる


なお、パーティーを組む際はギルドに報告が必要


など、たくさんの説明文がかかれている


「あの…、横島さんはかなりの山奥の田舎で育ったらしく、あまり常識がありません。　恐らく精霊ルビス様の祝福も受けてないでしょう」

横島が資料を読む中、シャオは遠慮がちにオルテガに話す


この世界の常識を横島はあまり知らない

先に説明しないと、後で混乱するだろうから


「そうなのか？　それほどの実力がありながら、洗礼も受けてないとは…」

オルテガは驚いて横島を見る


「すいません。　人前に出たのは最近なもんで…」

横島は申し訳なさそうに謝る


「いや、こちらこそ気が利かなくて済まなかった。　では教会に行き、洗礼から始めないとな…」

オルテガはそう呟き考える


「お父さん、私が教会まで連れて行くからいいよ！」

オルテガの呟きにアリスが答える


「そうか、では３人で行ってきてくれ…」

オルテガに言われて横島達は教会に向かう


「洗礼って何するんだ？」

横島はシャオとアリスに挟まれて手を繋いで歩いている


「洗礼を受けると精霊ルビス様の祝福を受けれるんだよ」
　
アリスはニコニコと答える


（神の祝福か…、マズいな…。　俺はこの世界の存在じゃないし、人間でも神魔でもない。　異端そのものなんだが…）

横島はあまり表情を変えないが、困っていた


横島は神魔妖人の四種の力をもつ存在

神や魔に属さないタダ一人の存在

ゆえに、異界に作ったアジトを中心に異世界を渡り歩けた

だが、どこの世界も強すぎる力を持つ異端者は疎まれる


神の祝福が本当なら、横島は排除されてもおかしくない


横島は異界にあるアジトを中心に、様々な世界を渡り歩いてるが、力を隠し勝手に入っていた


その世界の神魔に関わるつもりなど無いし、世界を助けることはあっても、安定を脅かすような行動はして来なかったので問題は起きなかったが…


「その洗礼は受けなきゃダメか？」

横島は伺うようにアリスを見る


「うん！　受けなきゃダメだよ。　普通は１２才になればみんな受けるんだからね」

アリスは笑顔で言い切る

どうやら常識らしい

「それに、洗礼を受けるといろんな恩恵があるんだよ。　職業を選べるようになるしね」

アリスは楽しそうに話すが、横島の顔はあまり冴えない


「不安なんですか？」

シャオは珍しく表情の冴えない横島を不思議そうに見る


「少しね…」

横島は言葉を濁す


「大丈夫ですよ。　ルビス様は正しき者の味方です」

シャオは横島を安心させるように話すが…


（本当に正しき者の味方か…）

神は必ずしも正しき者の味方ではない