その三

高畑から情報を得て以来土偶羅は密かに活動を活発化させたが、横島の日常は全く変わらぬまま木乃香達にテスト勉強を教えたりして数日を過ごしていく

そしてテストの三日前の金曜の夜、繁華街にある一件の居酒屋に横島の姿があった

実はこの日は季節外れに赴任したネカネの歓迎をするべく、女子中等部三年の学年主任を勤めていた新田が女子中等部の教員に声をかけていたのである

高畑・源しずな・瀬流彦などもおり、およそ30人ほど集まっていた


「ネカネ・スプリングフィールドです。 ネギが皆様にいろいろご迷惑をかけて申し訳ありません。 私自身も未熟ですがよろしくお願いします」

集まった教師陣を前に挨拶するネカネだが、まずはネギの事への謝罪から入る

麻帆良に来てあまり月日は過ぎてないネカネだが、子供であるネギの後始末やフォローで周りの教師に負担がかかっていた事実に申し訳ない気持ちでいっぱいだった

確かに生徒の受けはいいし真面目な性格から教師陣も頑張ってると評価はしてるが、それは《子供先生》として見た上での事である

一人の社会人としてネギを見れば、迷惑以外の何物でもなかった

中途半端に生徒に甘い顔をしていい事だけは言うが、いろいろと後始末したり振り回される教師陣は負担がかかっていたのは隠しようがない事実である

中等部で働き始めてからネカネは、ネギの後始末やら他の教師への対応で忙しい日々だった

集まった教師陣へ謝罪から入ったのは、ある意味大人として当然の行動だろう


「ネカネ君もネギ君も慣れない日本でよく頑張ってるよ。 それでは乾杯しようか」

ネカネの挨拶をフォローするように新田はさっそく乾杯の音頭を取り、教師陣はそれぞれに酒や料理を味わっていく

実際ネカネの評価は悪くなく逆に高い方だろう

ネギに関しては扱いにくさから腫れ物を触るような扱いの教師も多いが、ネカネが来て以来だいぶマシになっている


そんな乾杯が終わるとそれぞれ自由に酒や料理を食べて行くが、ネカネは近くに座ったしずなや他の教師にイギリスでの仕事やネギの過去などいろいろ聞かれていた

良くも悪くも目立つ子供先生については、以前からいろいろ興味があったが深く関わるのを避けて誰も聞けなかったのである


(ネギがあんな性格の割には、ネカネさんは普通なんだよな)

周りの教師と上手くやっているネカネに横島は少し驚きを感じていた

空気が読めないと言うか人間として基本的な常識が欠けてるネギを見てきただけに、普通以上に常識があるネカネには少し驚きを感じていたのだ


(ネギのじい様が魔法学校の校長だったか? 問題の元凶はそいつかもな。 何故精神的ケアをして常識をしっかり教えんかったのか……)

ネカネを見てネギの教育を誰がしてたのか少し気になる横島だったが、立派だと噂の祖父が元凶かと思う

村の悲劇から甘やかされて育ったのは想像に難しくないが、何故精神的なケアをしっかりして常識を教えなかったのか理解に苦しむ

なまじネギ素直な性格なだけに、その環境が哀れに思えてしまうのだ


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