その三

「こりゃ一から考え直しだな。 魔法世界の情報収集も必要だし参ったわ」

エヴァと高畑のやり取りを半ば無視して考え込んでいた横島だったが、自分と土偶羅の予想以上に厄介な問題だった事に渇いた笑いを浮かべるしか出来なかった


「坊やと神楽坂明日菜を守る程度なら問題なかろう」

「今のところはな。 だけど連中や魔法の国が本気動いたらどうなる? ネギの母親が処刑されたはずのお姫様なら、ネギが生きてたら困る連中だっているんだろ? 明日菜ちゃんの正体だって何処まで隠せてるのやら……」

高畑が話した赤き翼と明日菜の過去に、横島は困り果てている

敵はフェイトのみならず、魔法の国メガロメセンブリアすらもありえると横島は考えていたのだ

世界の危機とそれに関わる20年前の戦いには嫌悪感を感じてしかたなかった


「英雄が命を賭けて世界を救って20年。 魔法世界の危機の根本の原因を知っててなお、今だに陣取り合戦してる連中なんて信用出来るかよ」

魔法世界の危機の根本の原因である魔力の枯渇による魔法世界の消失に関して、正直横島にはあまり興味がなかった

世界が危機に直面してるのにも関わらず、くだらない対立を続けるメガロメセンブリアと帝国に呆れているくらいである

そしてそれはかつて滅びが待つと分かっていながら戦争をしていた、元の世界の神魔界とも似ている気がした


「横島君どうするつもりだい?」

万が一を考えて過去を話した高畑だったが、横島が予想以上に危機感を持ち考えている事に驚きを感じている

横島が他者にあまり関わりたがらないのを理解して高畑は、まさかそこまで危機感を持ち考えるとは思わなかったようだ


「どうもこうもないですよ。 当面は情報収集と警備人物の範囲を広げるだけです。 悪いけど俺は魔法世界の危機なんかに関わる気はないですから」

驚き見つめる高畑に横島は魔法世界に関わる気はないと断言する

自分達で努力もしない魔法世界を救ってやるほど、横島は魔法世界に思い入れも何もなかった



「やれやれまた厄介事か」

「悪いな。 魔法世界の情報収集を始めてくれ。 それと敵対した時のシミュレーションも頼む」

高畑が帰った後、横島はアジトに戻り急遽土偶羅と今後の対策を練り始める


「まさか連中と一戦交える気か?」

明日菜の正体を隠されていたエヴァは何か面白くなかったらしく高畑が帰った後も着いて来ているが、先程高畑に話した内容と違い横島が魔法世界と戦うような発言をしたのには驚きを隠せなかった


「俺からは相手にするつもりはないけど、向こうが権力やら武力で来たら対抗策は必要だろう? 少なくとも守る為には抑止の為の力が必要だ」

横島としては魔法世界と関わるつもりはないが、相手が強力な力で無理矢理ネギと明日菜に手を伸ばして来たら黙って従うつもりなどない

加えて何かしらの政治的な工作になる可能性も否定出来ないため、相手の分析やら戦略のシュミレーションは早い段階から必要だった

結果土偶羅は密かに魔法世界の情報収集と対策を立てることを始めることになる

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