その三

組織から距離を開ける横島が、積極的に情報を集めてるなど想像もしてなかったのだろう


「横島、何故黙っていた!!」

「確証が無かったんだよ。 こっちが調べた限りじゃアスナちゃんがお姫様だって可能性が見つかっただけなんだ」

高畑が黙っていた合間に、エヴァは横島を責めるようにキツイ表情で睨みつけ重い沈黙が辺りを支配する


「やはり君には全てを話した方がいいのだろうね。 僕から見た赤き翼とナギの真実を……」

ヘルマン戦の後に明日菜が狙われたと知った高畑はその背景を探っていたが、相手がフェイト・アーウェルンクスだった事もあり全く掴めてない

その間も高畑は横島に明日菜の過去を話すべきか、ずっと悩んでいたようである

出来る事ならこのまま静かに生きて欲しいと願うのは変わらないが、明日菜がネギを通して魔法に関わってしまった現状では誰かが明日菜を守らねばならないのは確かであった



「パンドラの箱に手を突っ込んだ気分だな」

高畑の語る20年前の大戦の真実と英雄の過去に、横島は思わずポツリと呟いてしまう

やはり関わってはいけないモノだと改めて再認識したのだが、横島はすでに関わってしまっている


「彼の行くえは僕にも分からない。 ただ彼が姿を消したとほぼ同時に、完全なる世界の創造主は姿を消した。 僕は傷付き死にゆく師匠を見捨てて、アスナ君を連れて逃げるしか出来なかった」

過去を語る高畑の表情は悲しみと後悔でいっぱいだった


「僕は心のどこかでナギ達に憧れて甘えていたんだ。 彼らなら何が起きてもきっとなんとかしてくれると…… それがこの結果だ」

かつてナギ達に憧れるただの子供だった高畑は、こんな未来になるなど考えもしなかったのだろう

もしも自分がもっと努力をして力があったなら……

大切な者を無くした者ならば一度は考える事だが、高畑も同じように考え今日まで生きて来たのだろう



「お前のそんな顔を見るのは久しぶりだな。 私に修行をつけて欲しいと毎日付き纏って以来か?」

高畑の話が終わった頃、エヴァはサディスティックな笑みを浮かべて弱気な高畑を見つめていた

かつて幼いアスナ姫の記憶を消した高畑は、アスナ姫を求めていつ来るかもしれない敵に怯え力を求めた

そんな時同級生になったエヴァと出会い、力を求めたのである


「京都で仕留めるべきだったな。 係わり合いになるのを避ける為に逃がしたのがアダとなったか」

一方横島は京都でフェイトを逃がした事を後悔していた

良かれと思って逃がした事が、結果的には付け入る隙を与えてしまったのだから……


「君達を巻き込むつもりはないし、僕が全て片付けるつもりだ。 ただ万が一を考えて用心はして欲しい」

エヴァに過去を暴露され落ち込んでいた高畑だが、フェイトの話になると自分が片付けると強く言い切る


「相変わらずツメが甘いな、タカミチ」

「エヴァ……」

「向こうはすでに、神楽坂明日菜の正体に気付いてる可能性が高い。 次は本気で来るぞ」

自分で全部片付けると言い切る高畑にエヴァは甘いと指摘した

状況的に明日菜の存在にフェイトは気付いてると考えた方が自然だし、前回ヘルマンに入り込まれた状況を考えれば次は本気で明日菜を確保に来るだろうと考えている


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