その三

賑やかな夕食も終わり木乃香達は寮に帰り、横島宅には高畑とエヴァと茶々丸とチャチャゼロが残っている


「まずはこれを」

高畑は本来の用件であった封筒を横島に渡すが、中身は京都での一件とフェイト・アーウェルンクスの報告書だった

そこには木乃香とスクナを利用して詠春を始めとする関西呪術協会の幹部を倒して実権を握ろうとした、一部の過激派の名前と末路が書かれている


「くだらん。 こんまモノ見る必要もないだろうに」

「そう言うなって。 知るべきことは知っとかないと対策も立てられんだろ」

一応興味はあるのか報告書に目を通すエヴァだったが、細々とした内容に興味を無くしたようで途中で読むのをやめてしまう

事件の背景や後日談には興味がないらしい


「こっちは収穫ナシか……」

「フェイト・アーウェルンクスについては西と東の双方で行方を追ってるが、行方も正体も不明。 ただ一つ気になる点があるんだ」

関西呪術協会の報告書に続きフェイト・アーウェルンクスの報告書に目を通す横島だが、こちらは追跡調査の中間報告が書かれてるが不明な点ばかり書かれている
 
経歴や正体が全て掴めてなかったのだ


「フェイト・アーウェルンクスは、ナギ達赤き翼が戦ってた秘密結社《完全なる世界》の残党かもしれない」

高畑が横島宅へ尋ねて来た本当の本題はこれだった

報告書にも書けない可能性と話を直接伝えに来たのである


「まだ残っていたのか? 貴様が壊滅させた連中の他にも」

完全なる世界の話にエヴァの表情が変わっていた

あまり興味がない話なのは変わりないが、完全なる世界の残党は高畑が壊滅させたはずなのだから


「前に僕が関わった連中の生き残りなのか別なのかは分からないが、フェイト・アーウェルンクスは似てるんだ。 創造主と呼ばれた者に仕えていた者にね」

部屋には重苦しい空気が立ち込めていた

高畑はあくまでも可能性の一つに過ぎないしもしかすれば考え過ぎかもしれないと語るが、その表情から決して楽観出来ないことを横島は悟る


「その連中の狙いにネギと明日菜ちゃんが入ってる可能性があると言うことか」

沈黙した高畑が横島の言葉に静かに頷いた

完全なる世界に関しては、横島も一般魔法使い程度には知っている

ヘルマンの一件の後、ネギを狙う可能性がある連中として土偶羅の報告に名前があったのだ

残党やら信奉者、それに完全なる世界としてナギ達に肉親を殺された者がネギを狙う可能性があると土偶羅が警戒していたのだった


「タカミチ、神楽坂明日菜は何者だ?」

ため息雑じりに言葉が途切れた横島に変わり、エヴァが高畑に明日菜の正体を追求する

明日菜の魔法無効化能力や高畑の態度から、普通の一般人ではないと気付いたようだ


「行方不明のアスナ姫か? 黄昏の姫巫って呼び名もあるみたいだがな」

無言の高畑の代わりに横島が答えると、高畑とエヴァの顔は驚きで満ちていく

二人共まさか横島が知ってると思わなかったらしい


「何故それを……」

「狙われた以上は原因を最低限調べなきゃダメだからな。 知らぬ間に詰んでたなんてゴメンだし。 守る以上情報は必要なんだわ」

確証もなく推測だと付け加える横島だったが、高畑の反応でそれが事実だと証明されてしまう

一方高畑は、横島が予想以上に情報を集めている事実に驚きを隠せないようだった


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