「今日は高畑先生もご飯食べて行ってえな」

リビングに差し込む日差しがオレンジ色に変わった頃、木乃香はいつものように夕食の支度をしようと明日菜を連れてキッチンに向かう

高畑は遠慮気味だったが、まき絵や裕奈達に半ば強引に誘われて承諾する

明日菜が高畑が好きなのはみんな知っているし、まき絵達が気を効かせたようだった


「今日はゆーな達と高畑先生もおるから、すき焼きにしよか？」

冷蔵庫を開けて今夜の献立を考える木乃香だが、中には調味料や保存出来る野菜くらいしかない

高畑に料理を振る舞う事に緊張気味の明日菜に笑みを見せた木乃香は、ニコニコとアジトに食材の調達に向かう

すき焼き用に肉や野菜をハニワ兵に頼んだ木乃香と明日菜は、結構な量の食材をキッチンに運び料理を始める


「お手伝いします」

二人が料理を始めて少しした頃、リビングの方が賑やかになり茶々丸がキッチンにやって来た

どうやらエヴァと茶々丸が来た事に驚いた裕奈達が、ちょっと騒いだようである


「私やっぱり料理とか向かないわ～」

「大丈夫やって、ゆっくり切ればいいだけや」

日頃料理などほとんどしない明日菜は慣れない包丁に四苦八苦するが、木乃香に教わりながらなんとか続けていく

木乃香・茶々丸が料理が得意でまき絵も結構料理が上手なため、日頃明日菜が料理をする事はほとんどないのだ



一方リビングにはあやかも来ていた

彼女は小太郎より明日菜達の勉強の進行状況を気にして来たようである

広い横島宅のリビングだが、流石にこれだけ集まると若干手狭だった


「みんな準備出来たえ～」

リビングの大きなテーブルには、すき焼き用の鍋が三つほど並んでいる

人数が多いだけにかなりの量になっていたのだ


「うわ～、いいお肉っぽいね！　先生いつもこんな物食べてるの？」

綺麗に皿に盛り付けられた肉や野菜に、裕奈と亜子は思わず驚きの声をあげ目を輝かせる

特に肉は霜降りの特上らしき物が、専門店のように綺麗に盛り付けられているのだ


「そんな訳ないだろ。　お前らが来るって聞いてたから頑張ったんだよ」

若干苦笑いを浮かべた横島は、裕奈達の追求を適当にごまかしてかわす


（いい肉余ってるんだろうな～　美神さん達贅沢だったから……）

ふと昔を思い出す横島だが、かつてアジトで自給自足を始めた頃に細かな指示を出していたのは令子達人間の金持ち組だった

彼女達が食肉用の和牛なんかをたくさん持ち込んでハニワ兵に飼育生産させていたのだが、農産物と違って畜産は一定の規模を維持しないと生産を続けるのが難しいため、かなり良質な食肉が余っている状況なのである

余ってる肉類は他の食品同様に時間を凍結して備蓄しているから別に腐らないしいいのだが、使用する際に余ってる高級肉からハニワ兵が運んだのだろう

調理担当の木乃香が肉の質まで注文を出さなかったゆえに



「ゴメンな～　ゆーな達がおるから、ここで食べてな」

一方来客用の部屋では、小さな一人用の鍋とワインでチャチャゼロが一人で夕食を取ることになっていた

いつもはみんなと一緒なのだが、流石に一般人と一緒に食事はさせられない


「オレハ全然構ワナイゼ」

木乃香は申し訳なさそうなのだが、チャチャゼロは全く気にしてないようである

まあ中学生と一緒に戯れる性格でもないので、本人も一人の方が気楽なのだろう