その三

実は元々超鈴音の活動と横島には直接的な関係がなく、危険度はあまり高くないと判断されていた

ところが最近活動を活発化して来た超鈴音が、密かに横島を警戒し監視しはじめた事で土偶羅もまた超鈴音を警戒している

推測ではあるが超鈴音は、近いうちに関東魔法協会に何かしらのアクションを起こすだろうと土偶羅は見ているのだ


ちなみに土偶羅は麻帆良の地上も地下も全域を監視しているから気付けたが、超鈴音の活動は金の流れや物流の流れでも調べる事は可能だった

超は自ら経営する超包子や大学の工学部などの様々な組織を利用して活動している

大量のロボットの開発及び量産化にも彼女は様々な工作をして魔法使いにばれないように資源や物資を集めているが、少し調べればわかることであった

大量の金と物流の流れを全く掴んでない関東魔法協会は、土偶羅から見れば甘いとしか言いようがない

少なくとも関東魔法協会は超鈴音を警戒しているし、ならば彼女の資金や物流の流れくらいは監視して欲しいというのが本音である


「奴には何か他の人間と違うものを感じる。 残念だがここの魔法使いでは対応しきれないかもしれん」

土偶羅は超鈴音を監視する中で、彼女の特異さに気付いていた

一個人があれほどの活動をするなど簡単ではなく、よほどの覚悟と決意が必要だろう

土偶羅は何か得体の知れない超鈴音を決して甘く見るつもりはなかった



一方地下研究室では超鈴音と葉加瀬が計画の最終調整を行っていた


「本当に茶々丸を計画から外すんですか?」

「仕方ないネ。 茶々丸は横島先生に近すぎるのだヨ。 茶々丸を使えば計画が洩れる可能性もあるし、何より横島先生の怒りを買う可能性があるネ」

計画には茶々丸が必要だったが、横島との関係が近すぎることから超は茶々丸を抜いた計画を進めている

京都とヘルマン事件を監視していた超は、横島の周辺人物を極力刺激しないように計画の変更を計っていたのだ

最終的には横島に介入される可能性が高いだろうと判断しているが、出来るだけ介入を減らし遅らせたいのだ

それに横島の普段の茶々丸への態度から、茶々丸を巻き込めば横島が早期に介入する可能性が高いと超は考えていた


「ヘルマン伯爵に平和ボケの魔法使い達を集めるとは、私も予想外だったネ。 思ってた以上に頭のキレる人ヨ」

本来の歴史を知る超としては、まさか横島が魔法使い達を使うとは思いもしなかったのである

平和ボケと言うかまともな危機管理が出来てない関東魔法協会に、横島が行ったテコ入れに一番反応したのは他ならぬ超だったのだ

学園長と高畑の武力以外は脅威でないと考えていた超は、横島が関東魔法協会を動かした事でその認識を改めていた

これ以上横島による関東魔法協会への介入が続けば、自分の計画に影響が出るのは明らかなのだから


「でもいかに先生一人が優秀でも、例の特殊弾には叶わないのでは?」

「あの人からは懐かしい空気を感じるのだヨ。 まるで……」

葉加瀬は必要以上に横島を警戒する超に対して少し考え過ぎではと感じるが、超はまだ足りないと感じていた

それは平和とは無縁な世界から来た超にしか解らない感覚なのかもしれない

横島もまた平和とは無縁な世界に生きて来た人だと超は見抜いている

そして自身の中にある不安を少しでも減らそうと彼女は最後まで足掻き続けていく


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