その三

「本当にいいんちょっていい人なんだよね」

「ネギ先生達が秘密にしてた事も、怒るどころか心配してたものね」

あやかがネカネの新生活を心配している姿を、少しお人よし過ぎると感じる夏美と千鶴は微妙な表情で見つめていた

ヘルマン事件で魔法などの裏側を知ったあやかは、隠されていた事にショックを受けつつもネギや明日菜達を心配していたのだ

特に幼いネギが戦いをするなどあやかにとっては信じられなかったらしく、その環境に心を痛めていたのである


「おっ、これ美味いで!」

その頃小太郎はと言えば、紅茶と共に用意されていた料理を美味そうに頬張っていた

優雅にお茶を楽しむなど無縁な小太郎としては、珍しい料理の方に目が行くらしい


「コタ君も来たんだ~ こっちも美味しいよ」

「そのコタ君はやめてんくれへんか?」

「コタ君はコタ君だよね?」

「そうですよ」

料理にがっつく小太郎にまき絵とさよは話し掛けるが、小太郎はコタ君と言う呼ばれ方が恥ずかしいらしい

しかしまき絵とさよはの二人は、意味がわからないと言わんばかりに首を傾げるばかりだった


「きゅ……」

そんなちょっと困った様子の小太郎を、タマモは諦めろと言わんばかりに見上げていた

誰が〈コタ君〉を広めたかは知らないが、いつの間にか仲間内ではコタ君で通じるようになっている

実はタマモもまた〈タマちゃん〉の愛称で呼ばれる事が多く、そのネコみたいな名前に最初は微妙に抵抗があったがすでに諦めているのだ


「ムッ…… ネギ! ちょっと来て!」

「えっ!? アーニャどうしたの? いいんちょさんごめんなさい」

一方アーニャはネカネとネギと楽しげに話すあやかに危機感を抱き、ネギを引っ張って連れ出してしまう

どうもアーニャの価値観では胸の大きさ=危険らしく、特にあからさまにネギへの好意を見せるあやかが胸が大きい事から余計に警戒しているようだった

アーニャの警戒度はあやかが一番であり二番が明日菜、三番が千鶴と楓の順番だったりする

ネギに近いという意味ではのどかもかなり近いのだが、胸の大きさから親近感を抱くらしくのどかに関しては警戒が甘かった


「せっかくお姉ちゃんとお茶を飲んでたのに……」

アーニャの行動にネギは珍しく不満げである

ネカネの来訪以来、ネギは学校外では常にネカネと一緒でベッタリしていた

ヘルマンとの戦いで精神的にショックを受けてるネギは、ネカネと一緒でないと寝れないようにもなっている


「ちょっとはネカネさんから離れて自立しなさいよ! それだからいつまでもダメネギなのよ!!」

麻帆良に来て以来以前にもましてネカネに甘えるネギに、アーニャは不満を抱えていた

それが教師や魔法使いとして無理をしている反動だと、アーニャは理解出来ないようである


「僕は別に……」

「まあまあ、二人ともケンカはいけません。 仲良くするです」

微妙に口げんかになりそうな二人の元に、トイレから戻った夕映とオロオロしていたのどかが仲裁に入った

夕映はアーニャの気持ちも分からないでもないが、正直ネギの環境が無茶過ぎるし今甘えるなと言うのは無理があると思っている

それぞれに騒がしい船上は優雅なお茶会と言うよりは学校のお昼休みといった感じだった

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