その三

「おっきな船に美味しい料理、日本人って凄いわね!」

「あの……、横島さんは特別なんですよ」

一方紅茶や料理に驚くアーニャに、のどかは困ったように説明をしていく

横島=日本人というイメージを持たれたら大変だと思ったようだ


「そうなの? 日本の大魔法使いじゃないの?」

「横島さんは魔法使いじゃないらしいですよ。 目立つの好きじゃないみたいですし……」

完全に勘違いし始めてるアーニャにのどかはオロオロしながらどうすればいいか悩むが、横島本人のあまり気にしてない様子に困っていた

そんな二人の近くではネギとネカネが並んで座っており、紅茶を楽しんでいる

しかしネカネはアーニャとのどかの会話を耳に入れて、横島の事をふと考えていた


(本当に魔法使いではないのでしょうか? まさか東洋の伝説の仙人の子孫だとでも?)

魔法使いではないと言う横島にネカネはいろいろと疑問が浮かんで来るが、答えにたどり着く事はない

横島がちらりと説明したのは他者と関わる事が少なかった一族の子孫という説明だし、そこから推測すると伝説の存在である仙人の子孫かとすら考えてしまう


(まさかね)

いろいろと疑問はあるネカネだが、木乃香達の様子から推測すると横島を危険な人物だとは感じてなかった

横島にも事情はあるのだろうし危険でない以上は、深く追求するのは止めようと思うのだ



一同がそれぞれに緩やかなひと時を楽しむ最中、突然船上の一角にあやか・千鶴・夏美・小太郎の四人が転移で現れる

実はあやかもまたネギやネカネ達をお茶に誘おうとしてアジトに来たのだが、すでに船上でお茶会をしてると知り土偶羅に頼んで転移で送ってもらったのであった

この転移に関しては土偶羅の能力ではなく、アジトの維持管理に使われてるシステムの機能である

実はこのメインコンピューターとシステムは、人間界の物ではなくアシュタロスが造った物だった

元々はコスモプロセッサーを造る上での副産物として出来た物であり、コスモプロセッサーの作製やアシュタロスが計画していた新世界の創造後のシュミレーションなどに広く用いられた物である

高い情報処理能力はもちろんの事、アジトの次元そのものを管理して外部からの次元を越える転移や内部での転移などを行使する機能もあった

その他には外部の情報収集や監視及び木乃香や明日菜の警戒なども、全てこのシステムを使った土偶羅により行われている

土偶羅自身も高性能で単独でもかなりのスペックだったが、横島のサポート及び幅広い裏方の作業にはこれらのシステムがないと流石に不可能だったのだ



「麻帆良での生活はいかがですか? 困った事があれば何なりとおっしゃって下さい」

「あやかさん、ありがとうございます。 皆さんのおかげで何不自由なく過ごしてますよ」

「それはよかったです。 もしイギリスの調味料や食材など必要ならばおっしゃって下さい。 私の実家では輸入販売もしてますので、すぐにお届け出来ます」

船にやって来たあやかはネカネの近況を尋ねて、何か困った事がないか心配していた

特に食事関係はイギリスと日本では全く違うために、あやかは差し入れとしてイギリスの調味料や食材を渡すつもりだったらしい


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