その三

ネギがアーニャを連れて戻ると、横島達は何も聞かなかったかのように振る舞っていた

子供の二人に対して余計な悲しみを思い出させる話をしないようにと気を使ったのだ

アーニャはエヴァに対して微妙に怯えてるのは変わりないが、一応自分が襲われる事はないとは感じたようである



その後横島はネカネとアーニャの気晴らしを兼ねて、一同を連れて港湾施設地区に来ていた

港湾施設地区は元の世界から持ち込んだ船舶が係留されてる場所である

一応港としての整備もされておりドッグや造船施設などが周辺に複数存在するが、相変わらず人が居ないため寂しい感じも受ける

港にはたくさんの種類の船が並ぶが、中でも目立ちのは複数存在する原子力空母と原子力潜水艦だろう


「あれは本物なのですか?」

「本物な訳ないだろう~ そっくりなだけだよ」

離れた場所からでも見える空母に木乃香達は物珍しそうに見つめるが、横島は偽物だと説明する

しかし尋ねた夕映を始め茶々丸などは本物だと見抜いていた

ちなみに空母の甲板には巨大な魔法陣が書かれてる艦もあるが、幸いな事に見えない

全て戦争のどさくさに紛れて美神親子やカオスなどが、無断で拝借して持ち込んだ物である



そんな木乃香達の前には、白鳥の形をした大型のクルーザーがあった


「何これ……?」

「地味な修行見たってつまんないだろ。 気晴らしに船上でお茶でもどうだ? イギリス人は紅茶が好きなんだろ」

白鳥の形をした大型のクルーザーにアーニャは驚き言葉が出ないようだ

というかこれだけ大きなクルーザーが、何故白鳥の形をしてるのかみんなが疑問に感じている


それはかつて六道家が所有していた船の一隻だった

神魔戦争の初期、令子やエミと共に六道家も移動出来る資産などを全てこちらに避難させていた物の一部である

所有者は亡くなったが処分する事も出来ずに、ハニワ兵により定期的に整備と運行をされてる船だった



「貴方お金持ちだったのね」

「俺のじゃないんだよ。 預かってるだけだ」

アジトの施設や船舶にアーニャは横島がお金持ちなんだと理解するが、横島は苦笑いを浮かべるしか出来ない

そのまま船は出港して船上ではハニワ兵によりティパーティーの準備が進められるが、中には横島の知らない人型の人形が混じっていた


「あれは……」

「私の姉さんです。 マスターの城の管理の為に居るのですが、それほど仕事もないので手伝ってるようです」

不思議そうに首を傾げる横島に説明したのは茶々丸である

元々はレーベンスシュルト城の維持管理が仕事らしいが、現在はハニワ兵も維持管理に入っているため土偶羅が素人の接客用に何体かエヴァから借り受けたらしい

秘密を知らぬ者が増えた事から、会話の出来る茶々丸の姉達に白羽の矢がたったようである



そのまま港を出港した船の上では、スコーンやサンドイッチなどのイギリス式のティーパーティーが用意された

遥々イギリスから来たネカネとアーニャが慣れない日本の生活で大変かもしれないと考えた横島が、二人の為にイギリス料理や紅茶を数種類用意させていたものである



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